クラウド導入のカスタイズ費用の税務上の取扱い
前回に引き続きクラウドに係る費用の取扱いについてです。令和2年度税制改正に受領者が自由にデータを改変できないクラウドサービスなどを利用している場合には、事務処理規定の作成等がなくても電子データのまま保存することが認められる見込であることなどから、今後新たにクラウドサービスを利用しようとする会社も更に増加するのではないかと推測され、そのようなことも影響してか、最近税務通信等でもクラウドサービスに関連する記事が多く目に付きます。
税務通信3588号の税務の動向でも”クラウド導入に伴うカスタマイズ費用は繰延資産”という記事が掲載されており、クラウドサービスをカスタマイズした場合の税務上の処理について解説されていました。
クラウドサービスのカスタマイズ費用を一時金として支払った場合、一般的には「繰延資産」として支出の効果の及ぶ期間で償却することとなるとしつつ、実務上、「効果の及ぶ期間」は5年が妥当との考え方があると述べられています。
この考え方の参考として、法人税基本通達8-2-3(繰延資産の償却期間)の「建物を賃借するために支出する権利金等」(3)で、契約による賃借期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び権利金等の支払いを要することが明らかであるときはその賃貸借期間とし、更新の際に権利金等の支払いが発生しない場合は5年で償却すればよいとされていることがあげられています。
一般的なクラウドサービスでは、契約期間を1年更新としている場合であっても、カスタマイズに要した費用は更新の都度支払う必要はないことが通常であるため、”「5年」で償却すれば、調査で指摘を受けるリスクは少ないと考えられているようだ”とされています。
一方で、ソフトウェアの所有権がユーザー側に移るような場合は、クラウド導入を新たなソフトウェアの取得と認識し、会計上「無形固定資産」として計上しているケースも考えられるとされていますが、この場合であってもソフトウェアの取得原価に算入し、耐用年数5年で償却することとなるとされています。
結局のところ、税務上の繰延資産と考えてもソフトウェアと考えても、とりあえず5年で償却しておけば税務上のリスクは低いということのようです。