上場会社で少数株主はどうやって臨時株主総会の招集を請求する?
たまに適時開示で見かける株主による臨時株主総会の招集請求ですが、20220年3月5日に株式会社電算から「株主による臨時株主総会の招集請求に関するお知らせ」という適時開示が行われていました。
同社は3月決算なので、2Qの四半期報告書を確認すると、当該請求を行ったのは持株割合第2位の事業会社でした。この事業会社は非上場会社で、上場会社の株式の10%以上を保有しているのはどういったかいしゃなのだろうとHPを確認してみると資本金1億円、連結売上高約216.5億円、社員数2202名という会社で、利益水準は不明ですが上場していても不思議ではない規模の会社でした。
どういった経緯で株式を保有することとなったのかは不明ですが、遡って確認してみると2014年3月期の大株主の状況に初めて同社が登場していました(当時は第3位で保有割合7.81%)。その後、保有株式数を増加させ直近では10.97%の株式を保有しています。
臨時株主総会の目的の事項は以下の三つとなっています。
・代表取締役の解任
・取締役定年制度導入の為の定款変更
・役員報酬の個別開示の為の定款変更
各事項の理由を要約すると、代表取締役は従来決算説明会で中期目標として2015年3月期から飛躍成長を標榜しているにもかかわらず、全く成長が見られないので、経営体制を刷新することが不可欠。同社の筆頭株主は信越放送株式会社であるが、同社出身の代表取締役及び他取締役1名は業績不振であるにもかかわらず長期に渡り安定的な地位についており、長期的な成長曲線を描けないパフォーマンスの低い経営者を強制的に交代させる仕組みを導入することが必要である。最後に、業績を勘案すると業績連動報酬はゼロないし前期実績を大きく下回っていなければならないが、確認するすべがないので役員報酬を個別に全員開示すべきというものです。
役員の解任も定款変更も決議要件が厳しいうえ、筆頭株主が1/3超の株式を保有していることからすると、総会において上記が承認される可能性はほぼないといえます。
この事例では、もともとかなりの割合を保有しているとが過去の実績からわかりますが、上場会社では2Q末と4Q末で株主に関する情報を取得していることが多く、仮にそれ以外のタイミングで3%以上の株式を保有しているとして、株主総会の招集を請求するような場合、どのような手続がとられるのか気になったので、調べてみることしました。
「株主総会ハンドブック(第3版、中村直人著)」によれば、手続は以下のようになるとのことです。
振替株式の株主が招集請求を行う場合、証券会社等の口座管理機関に対して個別株主通知の申出を行い、会社に対して個別株主通知がなされた後、4週間以内に株主総会の目的である事項および招集の理由を示して、株主総会の招集請求を行う必要がある。株主の申出から、会社への個別株主通知まで、原則として4営業日を要する。招集請求を受けた会社側では、個別株主通知を確認したうえで、本人確認を行い、行使要件の充足を確認したあとに招集手続に入る。
株式を保有している側からすれば、発行済株式総数から保有割合を計算することができるため直接会社に請求すれば良いと考えてしまいそうですが、上記からすると、とりあえず証券会社等の口座管理機関に対して個別株主通知なるものの申出を行うということからスタートするようです。
上場会社の株主で、株主総会の招集を請求する立場になることはほとんどないと思いますので、役に立たない可能性が高いですが、そんなものかと勉強になりました。