国外財産調書と国外財産調書、両調書提出義務ある場合は国外財が産特例のみ適用
財産債務調書は提出していたが、国外財産調書が不提出であったケースにおいて、国外財産加重措置及び財産債務軽減措置の適用の有無が争われた裁決事例が、T&A master No.825で紹介されていました。
国外財産調書の提出制度は、その年の12月31日においてその価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する場合は、翌年3月15日までに当該国外財産の種類、数量及び価額等の明細を記載した国外財産調書を所轄税務署長に提出しなければならないとする制度です。
一方、財産債務調書の提出制度は、所得税の申告書を提出すべき者が、当該申告書に記載すべきその年分の総所得金額及び山林所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつ、その年の12月31日おいてその価額の合計額が3億円以上の財産等を有する場合には、その年の翌年の3月15日までにその財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額等の明細を記載した財産債務調書を所轄税務署長に提出しなければならないとする制度です。
いずれの制度においても、適正な記載及び提出を確保するためのインセンティブとして、記載された国外財産に関して所得税等の申告漏れが生じたとき(記載された財産または債務に関して所得税等の申告漏れが生じたとき)であっても、加算税を5%軽減する措置がとられれることとされています(国外財産軽減措置、または、財産債務軽減措置)。
一方で、国外財産調書(財産債務調書)を提出期限内に提出しなかったとき、又は提出された国外財産調書(財産債務調書)に記載がない国外財産(財産または債務)に関して所得税等の申告漏れが生じたときは、加算税を5%加重する措置が設けられています。
上記で紹介されていた裁決事例では、税務調査により外国株式に係る配当所得の申告漏れがあるとの指摘により、修正申告とともに、国外財産が5,000万円を超えたとして国外財産調書を提出したが、原処分庁は過少申告加算税の賦課決定所分を行う際に国外財産加重措置を適用したところ、納税者は、修正申告した所得の基因となった外国株式については財産債務調書に記載して期限内提出していることから、過少申告加算税うち当該外国株式に係る配当所得の部分は、財産債務軽減措置が適用されると主張して争いとなったとされています。
結論としては、タイトルの通り、国税不服審判所は、両調書の提出義務のある場合は国外財産特例措置のみが適用されるとして、納税者の主張を斥けたとされています。
すなわち、財産債務特例措置の適用対象は財産債務調書への記載を要しない国外財産を除く財産に関して生ずる所得に対する所得税であるとされており(国送法6条の3①)、財産調書への記載を要しない国外財産とは、居住者が国外財産調書を提出する義務を負う場合における当該国外財産であり、当該国外財産については財産債務特例措置が適用されないとしたとのことです。
一般的に国外財産の方が課税当局が補足しにくいであろうことからすると、国外財産調書の方が優先的に考えられるというのは、自然な感じではありますが、故意でなくても財産債務調書に記載していれば問題ないだろうと考えてしまう可能性はありそうなので、注意が必要です。