2019年12月期有価証券報告書提出延長申請は3社
大手の上場会社では、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、全社的に在宅勤務が実施されるなどの措置が講じられているところも散見されますが、2019年12月期の有価証券報告書を期限内に提出できなかった会社がどれくらいあるのかを確認してみました。
有価証券報告書の提出期限の延長は適時開示されているはずですので、Tdnetで検索してみると、2019年12月期の有価証券報告書の提出期限延長の申請をしている会社は以下の3社でした。
①(株)FHTホールディングス(JASDAQ)
②(株)ALBERT(マザーズ)
③(株)ジェイホールディングス(JASDAQ)
このうち②(株)ALBERTは、「データサイエンティスト育成事業に係る取引に関する売上高計上の妥当性、及び同四半期の受託業務に係る取引に関する売上計上の妥当性」について調査を要する必要があることから提出期限の延長を申請したものとされています。
また、③(株)ジェイホールディングスも、連結子会社が行った「過去の不動産取引の一部に関して、その売上計上の妥当性につき外部から指摘を受け」たことにより、第三者委員会の調査が継続中であり、会計監査人の追加的な監査手続が完了しないことにより提出期限の延長を申請したものとなっています。
というわけで上記2社は、よくある(?)不適切な会計処理絡みによる提出期限の延長で、新型コロナウイルスとは何の関係もありませんでした。
一方、①(株)FHTホールディングスは、中国における3社の連結子会社において、決算関連手続が遅延していることによるものとされています。
具体的には、「2020年1月29日より新型コロナウイルス感染症による肺炎の予防及び抑制を目的とした中国の省政府や市政府の通達による移動制限等に従う影響」とし、「①当該通達を無視することは困難であること、②当社の中国子会社の従業員や中国における会計監査人等決算関連手続に係る人員の健康被害リスクの回避、③新型コロナウイルス感染症の拡散防止のため社会通念上適切な措置等を考慮したもの」とされています。
FHTホールディングスの中国子会社の重要性については、3Qをベースに連結総資産48億円中、37億円を占めているとされ、「当社決算に占める影響は大きい」とされています。
上記の通り、Tdnetで検索した結果、12月決算会社で新型コロナウイルスの影響で有報の提出を延長したのは1社のみということで、数社はあるのではないかと考えていたので意外な結果でした。もっとも、12月決算会社では基本的に2月15日までに短信を提出していたことから、日本で問題が本格化する前に主要な決算作業が概ね完了していたと考えられ、出社に制限がかかっても有価証券報告書作成する上ではあまり問題とならなかったということだと考えられます。
そういった意味では、4月中旬に短信の提出期限を迎える2月決算の小売業が、短信を従来と比較してどのタイミングで提出できるのかに注目したいと思います。