休業手当は給与課税、休業補償は非課税
税務通信3607号の税務の動向に「新型コロナ 労基法26条の「休業手当」は給与課税」という記事が掲載されていました。
休業手当は平均賃金の6割以上とされており、会社によっては8割とするなど法を上回る水準で支給を行っていることもあるものの、通常の給料に比べると支給額は低くなります。数日程度であれば、働かずに一定額をもらえればまあいいかという気もするものの、長期間となるとやはり何かと厳しいというのが現実だと思われます。
税務通信の記事によると、国税当局に休業手当の課税関係に関する問合せが多く寄せられており、非課税となる「休業補償」と混同して表現されるケースもあったとされています。
確かに、休業手当も休業補償も、労働者からすると一般的にあまり受給する機会のあるものではないですし、「休業手当」も労働しないで会社からもらっているという感覚からすると「休業手当」と「休業補償」を単なる表現の違いと考えてしまうということも理解できます。
しかしながら、「休業手当」は労働基準法26条に基づくもの、「休業補償」は労働基準法76条に基づき、業務上の負傷等の影響により療養が必要な場合に支払われるもので、実質的には労災によってなされる給付となっています。そして、この「休業補償」は損害の補償と位置付けられるため、所得税法9条1項3号イにより非課税とされています。
これに対して、休業手当については、所得税法9条で限定列挙されている非課税所得に該当しないため、給与所得として源泉徴収が必要となります。
休業手当はもらう側からすれば、労働していないとはいえ通常よりも少額のため非課税として欲しいという意見も多くありそうですが、仮に休業手当が非課税所得となるのであれば、通常時に使用者が労働者に休暇のかわりに休業を命じて、さらに非課税で所得を支払うことが可能となり、余裕がある会社ほど、人材育成や福利厚生的に使用するということが横行するのではないかと思われます。
今回、自粛要請により休業を余儀なくされた労働者が多数いたということを踏まえると、今回の休業手当を非課税とするという特別措置のようなものも、選択肢の一つとしては考えられたのかも知れません。
とはいえ、そのような措置は講じられていませんので、休業手当は課税対象と間違わないように注意しましょう。