LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い(案)の公表
ASBJは2020年6月3日に、実務対応報告公開草案第59号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い(案)」公表しました。
LIBORは不正問題に端を発して、2021年12月末をもって公表が恒久的に廃止される見通しが高まっていることをうけ、実際にLIBORが廃止された後のヘッジ会計をどのように処理するのかを明らかにしたものです。
金利指標置換前、金利指標置替時、金利指標置替後に区分して会計処理が規定されていますが、今回の金利指標改革に基因するLIBORの置き替えは企業側からみると不可避に生じる事象であるため、ヘッジ会計を継続して適用することができるという特例的な取扱いが容認されています。
まず、金利指標置換前においては、金利指標改革に基因する契約の切替が行われたときであっても、ヘッジ会計を適用することができる(5項)とされています。なお、ここで「契約の切替」とは、既存の契約をその満了前に中途解約し、直ちに新たな契約締結すること(4項(2))とされています。また、この取扱いは、金利指標置換時及び金利指標置換後も同様とされています。
「できる」規定ですので、ヘッジ手段が消滅した場合にヘッジ会計の適用を中止し、その時点までの当該ヘッジ手段にかかる手段または評価差額をヘッジ対象に係る損益が認識されるまで繰延べる、あるいはヘッジ対象が消滅した場合に、ヘッジ会計の適用を終了し、繰延べられているヘッジ手段に化係る損益または評価差額を当期の損益として処理しても問題はありません(そもそもこの処理を回避するための特例ですので)。
金利指標置換前のヘッジの有効性の評価については、「金利指標置換前においては、ヘッジ対象およびヘッジ手段の参照する金利指標は金利指標改革の影響を受けず既存の金利指標から変更されないとの仮定を置いて実施することができる」(7項)とされています。
また、事後テストにおいては、「金利指標置換え前においては、事後テストにおける有効性評価結果、ヘッジ有効性が認められなかった場合であってもヘッジ会計の適用を継続することができる」とされています(8項)。
金利スワップの特例処理についても、「金利指標置換前においては、ヘッジ対象及びヘッジ手段の参照する金利指標は金利指標改革の影響を受けず既存の金利指標から変更されないとみなすことができる」(9項)とされています。
よって、金利指標置換前においては、従来ヘッジ会計(あるいは金利スワップの特例処理)が適用可能であったのであれば、基本的に継続適用可能と考えてよさそうです。
では金利指標置換時の会計処理はどうなるのかですが、「当初のヘッジ会計開始時にヘッジ文書で記載したヘッジ取引日(開始日)、識別したヘッジ対象、選択したヘッジ手段等を変更したとしても、ヘッジ会計の適用を継続することができる」(12項)とされています。
これは、ヘッジ文書の変更のみでヘッジ会計の中止とした場合、金利指標置換前と同様に有用な財務情報の提供につながらないと考えられるためとされています(46項)。
金利指標置換後においては、金利指標置換前に「金利指標置換え前においては、事後テストにおける有効性評価結果、ヘッジ有効性が認められなかった場合であってもヘッジ会計の適用を継続することができる」という8項の規定を適用していたか否かにかかわらず、同項の取扱いを適用し、2023年3月31日以前に終了する事業年度までヘッジ会計を継続することができるとされています(13項)。
2023年3月31日以前に終了する事業年度までとされているのは、LIBORの公表停止が予定されている2021年12月末から概ね1年間を想定し設定されてたものとのことです。
最後に、当該実務対応報告を適用することを選択した企業は、実務対応報告を適用しているヘッジ会計の内容(ヘッジ会計の方法、ヘッジ手段、ヘッジ対象、ヘッジ取引の種類等)を注記することされています。また、一部のヘッジ関係のみ適用する場合には、その理由を注記するとされています(16項)。