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表明保証条項違反に基づく補償については損害賠償と取得価額減額の双方の可能性あり

T&A master No.846に裁判上の和解に基づく解決金を「損害賠償金」として益金に算入すべきか、あるいは「株式の取得対価の返金」として益金算入不要かが争われた裁判がとりあげられていました(令和2年8月6日東京地裁民事2部)。

この事案の概要は以下のとおりとされています。

“医療及びヘルスケア関連事業を展開するM社は、A社の株式を公開買付けにより取得したが、A社の不適切な会計処理が判明したため、A社の筆頭株主で代表取締役であったB氏らに対し、A社株式取得のために過大な支払をしたことによる損害が生じたとして訴訟を提起した。その後、裁判上の和解が成立し、同社はB氏らから合計1億4000万円を解決金として受領した。”

M社は受領した解決金を益金算入するとともに同額を子会社株式評価損として損金に算入したが、課税庁は損金算入を認めず裁判に発展。結論として、東京地裁は、株式の取得対価の返金ではなく、損害賠償金として益金に算入すべきと納税者の敗訴となりました。

興味深いのは、「表明保証条項違反に基づく補償については損害賠償と取得価額の減額の双方の可能性があり、B氏らの代理人が、原告らが提案した和解条項案が、課税を避けるために本件解決金の法的性質を本件B氏所有株式の売買代金の減額分とすることを意図したものであると理解することができた可能性も否定し難いとした」とされている点です。

この事案では、「本件別訴における訴訟物には譲渡価格の減額調整としての表明保証条項違反の補償金請求が含まれていない上、原告らが和解期日の席上で行った和解条項案の説明は、本件解決金に対し課税されることを避けるものである旨にとどまり、譲渡価格の調整としての表明保証条項違反による補償金であるといった法的構成の下に本件解決金の支払を求める旨の明確な表示があったとはいえないなどとして、本件解決金の法的性質は損害賠償金であるとした」とされています。

上記以外にも、支払がB氏のみでなく元取締役のC氏及びD氏も含めた連帯債務となっていることなども法的性質を損害賠償とみるべきとの判断材料となったとされていますが、上記からすれば、当事者間の合意内容の明確化によって表明保証条項違反による補償金として株式の取得対価の返金と整理できる可能性もあったのではないかと考えられます。

M&Aなどの株式譲渡契約では表明保証条項が含まれるのが一般的ですが、何らかの問題が事後的に発覚して、売主に何らかの補償を求める場合、もらい方によっては、単に益金算入となることもあれば、株式の取得対価の返金として取り扱うことができる可能性もある事例として頭の隅に留めておくとよいのではないかと思います。

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