少額な電車代・バス代も「報酬・料金」に該当すれば源泉対象
税務通信3626号の税務の動向に「源泉徴収不要な交通費等の範囲をQ&Aで紹介②」という記事が掲載されていました。このブログでも何度か関連する記事について記載さいていますが、税務通信の記事によると、未だに多くの問合せが寄せられているとのことです。
それだけ、実務上、源泉対象としていないケースがあるということだと考えられますが、今回の記事で掲載されてたQ&A4問です。
その中の一つが「電車代やバス代などのような”少額”な交通費等を会社が負担する場合も、源泉徴収が必要となりますか?」というものです。
これに対する回答は、”「報酬・料金」に該当すれば、少額な交通費であっても源泉徴収が必要となります“というものです。
「会社が、フリーランス等のために負担した旅費・交通費等のうち、交通機関・ホテル等に直接支払うものが源泉徴収不要となる趣旨は、フリーランス等(役務提供者)側で、具体的な旅費・交通費等の金額を把握することができず、事業所得や雑所得の計算が困難になるため」とされており、「電車代やバス代のように”少額”な交通費であっても、「報酬・料金」として源泉徴収を行うことが原則となります」とのことです。
ただし、領収書の発行自体は可能であることが一般的であるため、フリーランス等が「会社宛ての領収書」の発行を受け、精算するのであれば、源泉徴収不要と取り扱って差し支えないとされています。
ここで問題となっているのは、長距離の移動に対する交通費ではなく少額の交通費ですから、領収書の発行が可能であるとしても、そのような領収書を入手するのは現実的でははありません。そうだとすると、例えば、Suicaの利用履歴を印字したものを提出してもらうというようなことで代替できないのかというようなことを考えますが、これは認められないと考えられます。
この点、”タクシーや高速道路の利用など、「宛名のない領収書」を発行することが慣例となっている場合についても、源泉徴収が必要となりますか?”という質問に対し、回答は、”「宛名のない領収書」では、会社が交通機関・ホテル等に直接支払うケースと同視できないため、源泉徴収が必要となります”とされていることから、券売機等から発行された履歴などがあっても、源泉徴収が必要ということになると考えられます。
近距離交通費の源泉を回避しようとするのであれば、SuicaやPasmoを会社が一定額チャージした上で、フリーランス等に供給し、使用履歴と共に回収し定期的に記帳するというようなことは可能かもしれません。
なお、旅費交通費について、「宛名なしの領収書」や「個人宛ての領収書」の原本を受領した場合、フリーランス等側の確定申告で必要経費として処理することは考え難いため、源泉徴収不要と考えることはできないかという質問については、「会社が、領収書の原本を受領していても、会社が交通機関・ホテル等に直接支払うケースと同視できなければ、源泉徴収が必要です」とされています。
当事者間では「立替経費」という認識であり、感覚的には源泉徴収対象としなくてもよいのではないかと考えてしまいそうなものですが、原理原則からすれば逃げ道はあまりない取扱いといえそうですので、対象となる経費が多い会社では注意が必要といえます。