旧経営陣解任の総会への委任状返信に3,000円のクオカードの可否
T&A master No.858に”委任状返送にクオカード、旧経営陣解任”という目をひく記事が掲載されていました。
これはJASDAQに上場しているプラスチック加工機メーカーの株式会社プラコーの筆頭株主が、委任状を返送した株主にクオカードを提供することを招集通知に記載した上で、臨時株主総会を招集し、2020年11月6日に開催された臨時株主総会で、プラコーの4名の取締役と5名の取締役選任、さらに今年6月に導入された買収防止策の廃止などを株主提案議案として付議し、事実上その全て議案が可決され、経営権を取得したとのことです。
これに対し、同社の監査役は、株主への高額なクオカードの提供が不公正な決議の方法に当たるとして、さいたま地裁に臨時株主総会の開催禁止の仮処分を行ったとのことです。
さいたま地裁は、”「現時点(臨時株主総会開催前)において、株主の権利行使に不当な影響を及ぼす恐れがあると認められるまでには至らない」として当該申し立てを却下。東京高裁、最高裁でも申し立ては認められず、結局臨時株主総会が開催された」とのことです。
上記の”現時点(臨時株主総会開催前)において”という点に関連して、さいたま地裁は「招集株主が、他の株主に対して、株主総会における権利行使に先立って、財物の贈与を行うことを表明し、又はそれを実行した場合において、贈与の目的、その条件、その財産的価値、議決権行使に係る議案の内容等に照らし、それが株主の権利行使に不当な影響を及ぼすと認められるときは、当該株主総会における決議の方法が著しく不公正なものとなるべきである」と指摘しているとのことです。
上記から、同記事では、「今後、プラコーの監査役や旧経営陣、あるいは株主から臨時株主総会における決議取消訴訟が提起される可能性もあろう」と述べられています。
単に議決権を行使した株主に対して3,000円のクオカードを提供するということであれば、議案に賛成するか反対するかは完全に株主の自由なので、株主としてはありがたくクオカードを頂戴するだけだと思いますが、委任状を送付した株主に3,000円のクオカードを送付するということだと、外形上、賛成票をクオカードで買っているというようにもとらえられますので、かなりグレーな手段だと一般的には認識されるのではないかと思います。
とりえあえず今後の成り行きに注目です。