無免許運転により事故を起こした場合に健康保険は使える?
健康保険を使用すると病院で治療を受けても基本的に3割の自己負担で治療を受けることができますが、一方で健康保険法では以下のとおり給付制限が設けられています。
第百十六条 被保険者又は被保険者であった者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付は、行わない。
上記116条で定められているとおり「自己の故意の犯罪行為により」怪我をして治療を受けたというような場合には、「当該給付事由に係る保険給付は、行わない」とされていますので、これに該当すれば治療費はすべて自己負担ということになります。
無免許運転で事故を起こした場合、一般的な感覚からすれば、上記に該当し健康保険は使えないということになりそうですが、結論としては必ずしもそうではないということのようです。
この点、「社会保険の実務相談 令和2年度(全国社会保険労務士連合会編)」のQ108に、無免許であるものの、自動車の運転に自信があったので車で出かけたところ事故を起こして怪我をした場合に、健康保険を使用できるかという質問が掲載されていました。
そもそも、無免許だけれども運転に自信があるという時点でかなりつっこみ処のある前提ではありますが、この質問に対する回答(一部)には以下の様に記載されています。
犯罪行為によって事故を起こすということは、犯罪行為と保険事故との関係に、因果関係の存することが認められねばなりません。しかも、無免許運転を行えば、このような事故が起きることが通常のことであるというような相当因果関係が存在するものでなくてはなりません。したがって、無免許運転を行った場合でも、運転技術のすぐれた者であれば、この種の事故は生じなかったかも知れないわけですから、無免許運転と保険事故との間には、必ずしも相当因果関係は認められないこととなり、給付は制限を受けないと考えられます。
こういった人に対する保険給付が巡りめぐって自分の保険料に跳ね返ってくると考えると納得いかないという気持ちにもなりますが、上記のような解釈となるとのことです。
もっとも、「無免許運転が著しい不行跡と認められた場合は、給付の全部または一部が受けられない場合があります」とされており、無免許だけれども運転に自信があるというような前提がなければ、一般的にはこちらに該当すると考えられます。
自動車の事故で考えると、制限速度30キロの道路を40キロオーバーで走行していて事故を起こして怪我をした場合と、制限速度80キロの道路を40キロオーバーで走行して事故を起こした場合では、いずれも40キロオーバーであるものの、事故との因果関係の強さは随分異なると思いますので、保険給付を受けられるのか否かに影響するのかも知れません。
美容整形などで健康保険が使えないというのは広く知られたことだと思いますが、怪我の治療であっても健康保険が使えないことがあるという点は理解しておいたほうがよいでしょう。
新型コロナウイルスの影響で忘年会も行われないケースが多いとは思いますが、通常であれば飲酒運転が増加しやすい時期ですので、飲酒運転によって事故を起こしたばあいも保険給付は受けられない可能性が高いと考えられる点も覚えておくとよいのではないでしょうか。