減資による中小税制適用の否認リスクは?
数週間前に、JTBが資本金を1億円に減資し、中小企業扱いで税負担軽減を図るというような記事が日経新聞に掲載されていましたが、このような減資について、T&A master No.873において、「減資による中小企業適用の否認リスクは」という記事が掲載されていました。
このような大企業による資本金1億円への減資は、コロナ禍の影響で増えているのかもしれませんが、今に始まったことではなく、従来から度々報道されていました。その結果、税務上大問題となったというような記事は記憶にありません。
この記事によると、実質的な大企業が形式的に資本金を減資することにより外形標準課税を回避したり、法人税法租税特別措置法上の中小企業特例を受けられるというのは立法趣旨に反するとしても、基本的に”憲法84条に定める租税法律主義は「課税要件法定主義」を含むと考えられているため、法律上の要件の定めのない課税は憲法84条に違反することになる”とされています。
一方で、条文にない課税をしたに等しい事案として、外国税額控除事件(最高裁平成17年12月19日判決、同平成18年2月23日判決、問題とされた取引が外国税額控除制度の濫用にあたるとして、控除が否認された事件)があるとされていますが、資本金を1億円に減資し、外形標準課税を回避等するのはそこまでの悪質性が認められないと述べられています。
これは、税法が、その適用対象を決定するのに「資本金」を採用している時点で、減資による適用回避は容易に想像できたと考えられるためとされています。減資にあたっては、株主総会の決議が必要となることから、大企業においては総会で承認してもらうというハードルはあるものの、株主としては計算上の資本金が100億円であろうと1億円であろうと問題はなく、むしろ会社の利益が大きくなり株価が上昇するのであればそちらの方が好ましいと考えるのが多数派だと考えられます。そのため減資に反対する株主はあまりいないと考えられ、株主総会で否決されるという可能性はほとんどないと思われます。
税務上の資本である「資本金等の額」を基準にすればよいのではという点については、そのような議論はあったものの、”現状、資本金を基準に税制上の取扱いを分けるという仕組みが多々存在する中、それらをすべて見直すのは現実的ではないだろう”と述べられています。
とはいえ、資本金の額で会社を判断するような時代ではなくなってきていますので、衡平な課税という点からすれば、税法も何らかの対応を図っていかなければならない時期にきているのではないかと思われます。