経団連の会社法各種書類のひな形が改訂されました
2021年3月9日に経団連から「会社法施行規則及び会社法計算規則による株式会社の各種書類のひな形」(改訂版)が公表されました。
2019年12月の会社法改正に伴い会社法施行規則等が改正されたこと、および「時価算定に関する会計基準」、「収益認識に関する会計基準」、「会計上の見積りの開示に関する会計基準」等の策定に伴い、会社計算規則が改正されたことなどに対応したものとなっています。
ひな型(改訂版)の適用時期は、書類によって異なるとされています。
1.事業報告及びその附属明細書
基本的に「会社法の一部を改正する法律」(令和元年法律第70号)等の施行に伴う「会社法施行規則等の一部を改正する省令」(令和2年法務省令第52号。以下「改正省令」という。)の施行日である2021年3月1日以後に事業年度の末日を迎える場合の事業年度に関する事業報告及びその附属明細書から適用。
ただし、補償契約及び役員等賠償責任保険契約に関する記載については、施行日以後に締結された契約について適用するとされています。
なお、問題となる会社は少ないと思いますが、施行日前に末日が到来した事業年度のうち最終のものに係る事業報告においては、社外取締役を置くことが相当でない理由(改正前会社法施行規則第124条第2項)の記載が求められるとされていますので、該当する会社は注意が必要です。
事業報告ではいくつか新設されている項目があります。まず「2-2.事業年度中に会社役員(会社役員であった者を含む)に対して職務執行の対価として交付された株式に関する事項」が新設されています。
ここでは、事業年度中に事業報告作成会社の会社役員(会社役員であった者を含む)に対して「職務執行の対価として当該会社が交付した」当該会社の株式がある場合には、以下の会社役員(会社役員であった者を含む)の区分ごとに株式の種類、種類ごとの数及び交付を受けた者の人数をそれぞれ記載するとされています。
①取締役(指名委員会等設置会社においては取締役及び執行役)のうち、監査等委員又は社外役員でないもの
②社外役員である社外取締役のうち、監査等委員でないもの
③監査等委員である取締役
④取締役及び執行役以外の会社役員(監査役及び会計参与)
なお、「交付を受けた者の氏名や個人別の交付株式数まで記載する必要はない」とされています。
また、記載の要否は「事業年度中に交付した」か否かで判断するとされています。そのため、事前交付型の譲渡制限付株式については、譲渡制限の解除に関わらず交付された時点で記載が必要となり、事後交付型の株式報酬(株式交付信託を含む)については、具体的な交付予定が存在したとしても、実際に交付されるまで記載を要しないとのことです。
記載が必要となる時点を間違わないように注意が必要です。
この他、以下の項目が新設されています。
4.会社役員に関する事項
4-8.補償契約に関する事項
4-9.補償契約に基づく補償に関する事項
4-10.役員等賠償責任保険契約に関する事項
4-12.業績連動報酬等に関する事項
4-13.非金銭報酬等に関する事項
4-14.報酬等に関する定款の定め又は株主総会決議に関する事項
5.会計監査人に関する事項
5-6.補償契約に関する事項
5-7.補償契約に基づく補償に関する事項
上記の中から、近年導入している会社が増加している「4-12.業績連動報酬等に関する事項」についてのみ確認すると、以下のようになっています。
報酬等に業績連動報酬等が含まれている場合には、当該業績連動報酬等について次の事項を記載する必要がある。
イ 当該業績連動報酬等の額又は数の算定の基礎として選定した業績指標の内容及び当該業績指標を選定した理由
ロ 当該業績連動報酬等の額又は数の算定方法
ハ 当該業績連動報酬等の額又は数の算定に用いたイの業績指標に関する実績
イの業績指標の内容については、当該業績連動報酬等が会社役員に適切なインセンティブを付与するものであるかを判断するために必要な程度の記載が必要とされています。
ロの業績連動報酬等の額又は数の算定方法については、業績連動報酬等と業績指標との関連性等、業績連動報酬等の算定に関する考え方を株主が理解することができる程度の記載が求められるとされています。これは、計算式や指標実績から具体的な金額や数ができるような記載が必ずしも求められるものではないとされています。
ハの業績指標に関する実績については、具体的な数値を記載することが考えられるとされているものの、必ずしも数値を記載することを求めるものではなく、実績について記載することでも足りるとされています。
2.株主総会参考書類
2021年3月1日以後に株主総会参考書類の記載事項を含めて会社法第298条第1項各号に掲げる事項が取締役会の決議によって決定(会社法第298条第1項第5号・第4項、会社法施行規則第63条第3号イ参照)された株主総会に係る株主総会参考書類から適用する(改正省令附則第2条第9項)とされています。
12月決算会社で、上記の取締役会決議が2月中、招集通知の発送が3月というような場合に問題となる可能性がありますが、3月決算会社を前提とすると、6月の総会から適用されると簡単に理解しておけばよいと思います。
なお、補償契約及び役員等賠償責任保険契約に関する記載については、施行日以後に締結される契約について適用するとされています。
3.計算書類及び連結計算書類
(1)金融商品の時価開示関係
原則:2021 年4 月1 日以後に開始する事業年度に係る計算書類及び連結計算書類
早期適用:2020年3月31日以後に終了する事業年度より可
(2)収益認識関係
原則:2021年4月1日以後に開始する事業年度に係る計算書類及び連結計算書類について適用
早期適用:2020年4月1日以後に終了する事業年度より可
(3)会計上の見積り関係
原則:2021年3月31日以後に終了する事業年度に係る計算書類及び連結計算書類について適用
早期適用:2020年3月31 日以後に終了する事業年度に係るものより可
(4)株式交付制度、株式引受権関係
これは、2021年3月1日から施行となっていますが、電子提供措置及び連結計算書類に関する電子提供措置は、会社法会計法附則1条ただし書に規定する規定の施行の日からとされています。