研究開発税制の自社利用ソフトへの適用拡大
令和3年税制改正によって研究開発税制の対象となる範囲が改正され、自社利用ソフトに対するものも新たに対象となるとされました。
クラウドサービスの開発などにあたり、研究開発が必要となることは考えられますが、従来は自社利用ソフトに対するものは対象外とされていたことからすれば、今回の改正によって、利用者への提供形態にかかわらず、税務上の試験研究費に該当するのであれば、研究開発税制の対象となるというのはリーズナブルな改正だと思います。
ただし、今回の改正は、販売目的ソフトのように、会計上、研究開発費として処理すべきものと判断されたものを税務上も同様に試験研究費として受入れるというものではなく、税務上、自社利用ソフトウエアに係る研究開発費が原則として資産計上になるという取扱いに変化はないとのことです。
取扱いが変わるのは、会計上は研究開発費として費用処理し、税務上は資産計上している場合に、会計上費用処理した部分は研究開発税制の対象となるという部分です。会計上も税務と同様資産計上している場合は、従来同様研究開発税制を適用することはできないとのことです。
クラウドサービスが一般化してきている昨今の状況を踏まえると、ここでいう自社利用ソフトは社外の第三者にサービスを提供する目的で制作した自社利用ソフトがイメージされますが、社内業務を行うためのソフトウェアについても、税務上の試験研究費に該当するのであれば、研究開発税制の対象となるとのことです(税務通信3652号「試験研究費の見直し等で研究開発税制の適用対象が拡大」)。
この点、「社内業務を行うためのソフトウエアについては、国税庁が平成15年に公表したQ&Aの影響などにより、自社の業務改善を目的とした試験研究の費用は、同税制の適用対象にならないのではないかとの誤解も生じていた」とのことです(同上)。令和3年税制改正大綱では、以下のように「一定の要件を満たすものは研究開発税制の対象となることを明確化するとしており、その内容が注目される」とのことです(同上)。
令和3年度税制改正大綱 45ページ
③ 開発中の技術をその開発をする者において試行する場合において、その技術がその者の業務改善に資するものであっても、その技術に係る試験研究が工学又は自然科学に関する試験研究に該当するときは、その試験研究に要する費用は研究開発税制の対象となること等、研究開発税制の対象となる試験研究費の範囲について明確化する。
実務上は、会計上の研究開発費と税務上の試験研究費の範囲をイコールとして取り扱えるのか否が問題となり、必ずしもイコールではないということになるのではないかと思われます。
DXや働き方改革を推進するという意味では、使い勝手のよいサービスの提供や効率的な社内のシステムの構築を促進するため、税額控除等をより適用しやすくするということは有益だと考えられますので、会計上研究開発費として処理されたものについては税務上も試験研究費と取り扱うというような運用が認められるようになることを期待します。