閉じる
閉じる
閉じる
  1. 18監査事務所が会計士資格を誤表記で有報訂正が必要らしい
  2. 内部統制新基準が2025年3月期より適用に(公開草案)
  3. デューデリジェンス(DD)費用の税務上の取り扱い
  4. テレワークの交通費、所得税の非課税限度額適用の有無は本来の勤務地で判断…
  5. プライム市場上場会社、88.1%が英文招集通知を提供
  6. タクシー、インボイス対応か否かは表示灯での表示を検討?
  7. 副業の事業所得該当判断の金額基準はパブコメ多数で見直し
  8. 総会資料の電子提供制度、発送物の主流はアクセス通知+議案等となりそう
  9. 押印後データ交付の場合、作成データのみの保存は不可(伝帳法)
  10. 四半期開示の議論再開(第1回DWG)
閉じる

出る杭はもっと出ろ!

会計限定監査役への損害賠償請求事件が最高裁へ

T&A master No.886のニュース特集に”最高裁が会計限定監査役への損害賠償請求事件で弁論開催へ”という記事が掲載されていました。

この事件は、会社が会計限定監査役(会計士・税理士)に対しその任務を怠ったことで従業員による継続的な横領の発覚が遅れて損害が生じたとして損害賠償を求めた事件で、「最高裁判所が弁論を開始することが明らかになった」とされています。

当該事件は一審は会社が勝訴し、監査役に約5700万円の損害賠償が認められていましたが、二審では会計限定監査役の任務懈怠責任が否定され、会社の請求がすべて棄却されていました。

今回、最高裁で弁論が開始されることによって、二審(東京高裁)の判決うが何らかの形で変更される公算が高まっているとされています。

上記の記事によると事件の概要は以下の通りとされています。

・上告人である会社は、印刷業を営む資本金9600万円の株式会社である。
・機関構成は取締役会設置会社かつ監査役設置会社。
・監査役の監査の範囲は会計に関するものに限定。
・当該監査役は顧問税理士(会計士)であり、昭和42年から平成24年まで同社の監査役に就任。
・会社では、従業員が平成19年から平成28年までの間に126回にわたり預金口座から合計2億③500万円を横領していた。
・会社は監査役が、金融機関の発行する残高証明書の原本を確認するなどの方法を用いて監査を行うべきであったにもかかわらず、これを怠ったとして損害賠償請求を行った。

一審(千葉地裁)では、上記の通り監査役に対する責任が認められました。その理由は、おおむね以下の通りとされています。
・会社は経理担当者が少なく、不適正な経理が行われる蓋然性が高い。
・一方で、監査役は会計士かつ税理士であり、監査役として負う善管注意義務の水準は公認会計士及び税理士としての専門的能力を有さない一般的な善管注意義務の水準よりも高い。
・明らかに写しであることを認識しており、原本の提示を求めることが容易であるにもかからわずこれを行っていないのは任務懈怠である。

確かに、会社が税理士(会計士)であるという専門性を考慮して監査役に選任していたということはあるかもしれませんが、無資格の監査役よりも善管注意義務の水準が高いということになると、監査役会設置会社で有資格者の監査役と無資格の監査役で善管注意義務の水準が異なるということになりそうですが、これは違和感があります。

上記の記事ではこの監査役が監査役としていくら報酬と得ていたのかは記載されていませんが、どちらかといえば報酬との見合いで判断したほうが、納得感は高いのではないかと感じます。もっとも、会社法的には報酬がいくらであれ、監査役に就任した以上は監査役として責任を負うわけですが…

これに対し二審(東京高裁)では、「会計限定監査役が監査を行う場合は、会計帳簿の信頼性欠如が会計限定監査役に容易に判明可能であったなど特段の事情がない限り、会社作成の会計帳簿の記載内容を信頼して、会社作成の貸借対照表、損益計算書その他の計算関係書類等を監査すれば足りると指摘し、会社作成の会計帳簿に不適正な記載があることを、会計帳簿の添付資料を直接確認するなどして積極的に調査発見すべき義務を負うべb期ではないとの判断を示した」とされています。

理由としていくつが挙げられていますが、その一つが「会計帳簿を作成するのは、取締役又はその指示を受けた使用人であり、使用人が作成する会計帳簿に不適正な記載がないようにすることは、会計限定監査役の本来的な業務ではないと考えられる」というものがあります。

たしかに、不正等が生じないように内部統制を構築するのは取締役の責任ですし、不正等を防止することに重きを置くのであれば、内部監査部門を設けるとか、常勤監査役を置くということを行うべきといえます。ただし、中小企業では現実的ではないので、会計限定監査役というものが認められていると考えられ、結局、そのような会計限定監査役に求められる監査の深度はどの程度なのかが問題といえます。

なお、この事件では、会社の取締役会は歴代又は現在の取締役に対する損害賠償を請求しておらず、1人の監査役を狙い撃ちする形となっており、この点について東京高裁の判決では、取締役らに対してこそ善管注意義務違反を検討すべきであると強く批判がなされたそうです。

個人的な感覚としては、会計限定監査役に過大な期待をするのは酷だと思いますが、最高裁でどのような結論となるのかは、今後の実務にも大きな影響を与えそうですので注目です。

関連記事

  1. 元子会社の粉飾で親会社が損害賠償責任を負うこととされた事例

  2. 株式の無償発行を会社法上可能とする方向で検討

  3. 任意の会計監査人

  4. 役員等の責任限定契約を再確認

  5. 東証1部上場会社の議決権行使書面の行使期限を巡る判決

  6. 計算書類における会計方針の変更の注記の1株当たり情報の取扱いは?…




カテゴリー

最近の記事

ブログ統計情報

  • 12,946,906 アクセス
ページ上部へ戻る