短期前払費用特例適用の留意点
税務通信3663号の税務の動向で短期前払費用の特例が取り上げられていました(「短期前払費用の特例に係る適用上の留意点➀」)
会計監査の対象となっている会社の場合、金額的に重要なものは法人税法上、短期前払費用の特例に該当しそうであっても、期間按分が求められることが多いと思いますので、それほど問題となることはないのかもしれませんが、そのような縛りがなければ「節税目的で用いられることも少なくない」とされています。
確かに年間の費用を支払時に一括で損金算入することができるとされていますので、予想以上に利益が出そうだというような場合に、節税目的でこの特例を使うことを考えるというのは自然な流れといえます。
しかしながら、この特例は「課税上の弊害が生じない範囲内での適用を前提としており、”利益調整”を目的とする適用は認められないこととなる」とのことです。
この特例が認められるのは、企業会計原則における「重要性の原則」によるとされており、上記の記事では、「重要性」の判断について過去の裁決事例が紹介されていました。
実務上は、そうはいっても・・・という感じになることも多いと思いますので、このような裁決事例を確認しておくことは意味があると思います。
まず、”「重要性の原則」から逸脱すると判断された事例”として紹介されていたのが「関裁(法・諸)平17第36号,平成17年12月15日裁決」で、パチンコ業を営む会社が、別会社に支払った業務委託報酬にかかるものです。
3期間における「業務委託報酬の各項目に対する割合」として示されてた割合によれば、販管費に占める割合は30.3%、30.8%、53.6%、営業利益に占める割合は113.1%、166.2%、400.4%とされています。
上記2項目以外の数値も示されていますが、上記の数値からして審判所が”「重要性の原則」を逸脱するものといわざるをえない。”と判断したというのは当然だと感じるレベルだと思いますので、そういっった意味ではあまり参考にならないといえます。
一方で、”「重要性の原則」から逸脱しないと判断された事例”として紹介されていたのが、「関裁(法・諸)平18第63号,平成19年3月30日裁決」です。
この事案の概要は以下のとおりとされています。
金属加工機械製造業を営むB社は、賃貸物件123件(車両運搬具・機械・事務機器)を賃借しており、11か月分の賃借料約5,400万円を前払いした。前払賃借料約5,400万円のうち、製造原価の賃借料勘定に約1,000万円、販売費及び一般管理費の賃借料勘定に約4,400万円が計上されていた。
この会社の場合、”製造原価に係る前払賃借料約1,000万円は、全体の製造原価約100億円の「0.1%」、販売費及び一般管理費に係る前払賃借料約4,400万円は、全体の販売費及び一般管理費約25億円の「1.7%」”という状況であったことから、審判所は重要性の原則を逸脱しないものとして、短期前払費用の特例の適用要件を充足すると判断したとのことです。
この事案は、一般的な感覚として金額は大きいものの、会社の規模によっては短期前払費用の特例を適用することができるということを確認できるよい事例だと思います。また、割合として0.1%はあまり参考になりませんが、1.7%でも問題ないと判断されているというのは参考になります。ボーダーがどこにあるのかが気になりますが、会計監査的な感覚でいえば3%~5%位にボーダーがありそうな気はしますが、3%位を上限に考えておくのが無難ではないかと思います