2020年4月~2021年6月に61社が減資関連の適時開示を実施
経営財務誌の調査によると2020年4月~2021年6月の間に減資に関する適時開示を行った上場企業が61社あったそうです(経営財務3513号)。
東証の上場会社(PROマーケット除く)が2020年末で約3,700社ですので、社会に与えている新型コロナウィルス感染症の影響を踏まえると61社(約1.6%)が多いのか少ないのかは判断の分かれるところだと思いますが、個人的には適時開示で比較的よく見かけたという印象をもっています。
経営財務誌の記事によると、上記61社のうち、資本金の額を1億円以下とするケースが約9割を占めていたとのことです。具体的には61社中56社が資本金を1億円以下としていたとされ、資本金1億円が23社で最多で、これに1千万円超~1億円未満が20社と続いています。なお、資本金を1千万円未満とした会社が2社あったとのことです。
適時開示における減資の理由についても集計されており、「資本政策の機動性等の確保」が58件で最多で、これに「財務体質の健全化」(22件)、「適切な税制への適用・税負担軽減」(19社)、「繰越利益剰余金の欠損填補」(12社)となっています。
コロナ前から、外形標準課税等の税負担の軽減を目的として資本金を1億円以下に減資するという事例は存在しましたので、「適切な税制への適用・税負担軽減」は思ったよりも少ないという印象です。
業種別にみると、小売業が18社で最多となっており、サービス業13社、情報・通信業が10社と続いています。小売業、サービス業は、コロナ禍により業績が悪化しているケースも相対的に多いと考えられるうえ、従業員数も多いので外形標準課税の負担が耐えがたいというケースが生じやすいのではないかと推測されます。社会的な後ろめたさはあるのかもしれませんが、外形標準課税の制度上、対象となるか否かが資本金の額で判定される設計になっている以上、状況によって検討されるはずの選択肢の一つとなっていると考えられます。
また、資本金の額は、一般的に会社の信用力にかかわるとも言われているものの、上場会社の場合は非上場会社と異なり一定の情報開示が強制されており、財務諸表については監査人の監査を受けているため、資本金の額の大きさが非上場会社ほど問題とはならないということも考えられます。
したがって、増加傾向を示すことはないにせよ、同様の事例は今後もそれなりにでてくるものと思われます。