脱税指南のコンサル会社代表への損害賠償請求が認められた事案
T&A master No.892(2021年8月2日号)に「脱税指南会社代表への損害賠償を容認」という記事が掲載されていました。
最終的に、「原告にも節税スキームが適法なものか細心の注意を払う必要があるとして、過失割合を5割と認定」されたとのことですが、個人的には、原告が本当に疑いもしなかったのかかなり疑問に感じる事案です。
この事案は、「節税スキームをうたい脱税を指南していたとして令和2年11月に名古屋国税局が法人税法等違反で名古屋地方検察庁に告発した会社の顧客(原告)が、同社の代表取締役(被告)に1,482万6,240円等の損害賠償請求を行っていた事案」とされています。
ここからが、問題のスキームですが、コンサル会社が「顧客に現金を渡し、その現金を同社に振り込ませ、その資金を香港等の海外関連会社を経由し、ケイマン等のタックスヘイブン国にて課税処理(非課税化)を済ませた後で顧客に返金」し、「その後、顧客が会社の発行する請求書に従って税務申告することで、その請求書に記載された金額が経費で落ちるという違法な脱税スキームを考案していた」とのことです。
この顧客は、コンサル会社の従業員から同社の提供する節税コンサルは適法であると説明を受け、仮想通貨取引等により多額の利益を得ていたため、税金額を減額するため同社のコンサルを受けたとのことです。
仮想通貨取引等により多額の利益をあげていたことによる税金を気にかけていることから、この顧客は脱税を目論んでいたわけではなさそうではありますが、とはいえ、上記のスキームの説明によると、結局顧客はこの取引において基本的に自己負担は発生しておらず、それで税額の減額が図れるというのを適法な手法だと信じたのかはかなり疑問に感じます。
裁判所は、「会社の代表取締役である被告には、従業員が顧客に対して違法に税金を免れる手法を適法な節税であると説明して勧誘したことにつき、少なくとも重大な過失があったというべき」と判断したとのことです。
一方で、「原告は節税スキームが違法に税金を免れる手法であると認識していたとまで認めることはできないとしたものの、税金を減額させる手法が違法なものでないかは細心の注意を払うべきであると指摘」し、上記のスキームは「いかにも不自然不合理な内容の手法であることからすれば、原告の過失割合を5割として過失相殺するのが相当であると判断」したとのことです。
本来的にはいいかげんなことを言って欺す側が悪いと思いますが、普通に考えて怪しいものは、問題があれば損害賠償請求をすればいいと考えることのないようにしましょう。