株式対価M&A投資促進税制-令和3年度税制改正
令和3年度税制改正について、確認が後回しになっていたので、とりあえず早々に確認しておいた方がよさそうな事項として、株式対価M&A投資促進税制について確認することにしました。
この税制自体は、会社法で株式交付が認められるようになったことを受け、2021年4月1日以後の組織再編からすでに適用開始となっており、GMOインターネットがこの税制適用の第1号となったようだという旨は以前取り上げました。
なお、この改正が適用されるに伴い、時限措置として認められていた「特別事業再編を伴う法人の株式を対価とする株式等の譲渡に係る所得の計算の特例」は廃止されています。
1.制度の概要
改正会社法で導入された株式交付制度を利用したM&Aを実施した場合に、一定の要件を満たしている場合には株主の譲渡損益に対する課税を繰り延べることができるというものです。
2.要件
①対象株主
非居住者のである株主は除外されることとされています。
②対価要件
課税の繰延措置を受けるためには、対価として交付を受けた資産の価額のうち、株式交付親会社の株式の価額が80%以上である必要があります。対価要件に制限があるわけですが、廃止された「特別事業再編を伴う法人の株式を対価とする株式等の譲渡に係る所得の計算の特例」では、株式以外の対価が対価に入ることが認められていませんでしたので、20%までとはいえ現金等の対価が混在しても課税の繰延が可能となっているという点は大きいと思います。
なお、株式交付親会社の株式以外の資産の交付を受けた場合には、株式交付割合(※1)に対応する部分のみ譲渡損益の計上が繰り延べられることとなります。
(※1)株式交付割合 = 株式の取得価額/(株式の取得価額+交付金銭額)
なお、株式の取得価額は譲渡株式数に譲渡直前の帳簿価額を乗じて計算することとなります。
③添付書類要件
株式交付親会社の確定申告書に、株式交付計画書及び株式交付に係る明細を添付することが必要とされています。当該明細には、株式交付により交付した資産の数又は価額の算定根拠を明らかにする事項を記載した書類を添付することが必要とされています。
ざっと要件をみた感じでは、対価要件を満たしていれば課税の繰延の適用を受けられそうな感じがします。現金対価等の割合についても、一部を先に現金対価で取得したうえで、株式交付で子会社化という手順をふめば、株式交付として譲渡した部分の株式対価相当分については課税を繰り延べることが可能かもしれません。株式交付について調べたかぎりにおいては、会社法的にはこのような方法も株式交付として許容されるようですが、税務上課税の繰延が認められるのかについては、慎重に検討する必要はありそうです。
この点については、継続して情報を確認したいと思います。