企業のポイント交換に係る金員は不課税-納税者が逆転勝訴(大阪高裁)
2021年9月29日(令和2年(行コ)第10号・第7民事部:西川知一郎裁判長)に企業がICカードの利用者に付与するポイントについて、提携企業のポイントとの交換に伴い、提携企業から受領した金員が消費税の課税対象か否かを巡り争われた控訴審判決が大阪地裁で下されたそうです。
この裁判の控訴人(納税者)は”大阪市にある交通系ICカード「PiTaPa(ピタパ)」の運営事業者”とされ、”同社のポイントは、鉄道利用などでたまり、1カ月分の料金を後払いする際に割り引かれる仕組みだが、航空会社のマイルなど提携する11法人の別のポイントからも交換できる”(時事ドットコムニュース)ものとのことです。ポイント交換の際、”利用者が交換を申請すると、同社のポイントが利用者に付与された後、提携法人が10ポイント当たり1円の資金を同社に支払う”(時事ドットコムニュース)仕組みとのことです。
控訴人は、提携法人から受領した金員について、当初課税資産の譲渡対価に含めて消費税の申告をしたが、その後に同対価には含まれないとして更正の請求をしたが、税務署はこれを認めなかったため訴訟に発展したものとされています(税務通信3677号)。
控訴人と国の主張を要約すると控訴人は、「本件金員はポイント交換による控訴人の経済的負担の精算のために交付される金員で、それ以外の役務提供の代金ないし代償という性質は持っていない」ため消費税の課税対象ではないと主張したのに対し、国は「本件金員は、控訴人が本件ポイントを付与し控訴人のポイントサービスの対象に組み込むことを内容とする役務提供があるからこそ支払われるもの」であり役務提供の対価なので課税対象であると主張したということのようです。
大阪高裁は「提携法人がポイント交換において控訴人に支払う本件金員の額は、控訴人が双方会員に付与した本件ポイントに係る本件ポイント還元額に等しくなるように定められている」ことなどからすると、「提携法人の控訴人に対する本件金員の支払いは、ポイント交換に係る提携ポイントを発行した者としてその利用に係る経済的負担を負うべき立場にある提携法人が、本件ポイント還元を行う控訴人のために、その原資を提供する行為にほかならないというべきである」などとした上で、本件金員を「控訴人のポイントサービスの対象に組み込むことを目的として本件ポイントを付与するという役務提供の反対給付としての性質を有するとみるのは困難」として対価には該当せず消費税の課税標準とすることはできないと判断したとのことです。
なお、国は最高裁への上告を行わなかったため、本判決は確定しているとのことです。
ポイントの交換制度からすると直感的には精算金という主張の方がすっきりくるので、個人的には一審で国が勝訴していたというのが不思議な感じでありますが、最初から課税対象外として処理していれば問題とならなかったのかもしれません。