売手負担の振込手数料-メールによる簡素な対応も可能なようです
少し前に税務通信で取り上げられていた内容をもとに、インボイス制度導入により売手負担の振込手数料処理が煩雑になるという内容を取り上げましたが、税務通信3682号で財務省担当官のインタビューによると簡素な対応も可能なようだという記事が掲載されていました。
インボイス制度導入後の売手負担の振込手数料については、3万円未満の取引の帳簿のみ保存の仕入税額控除等が廃止されることにより、値引きしたもの(売上対価の返還等)整理して処理する場合、基本的には売手から買手に適格返還請求書の交付が必要が必要となります。
実務上、売手負担の振込手数料の多くは、買手が勝手に手数料を売手負担にして振り込んでくることにより発生しているものではないかと思われ、従来はいちいち手数料分を再請求せずに売手側で支払手数料等で処理をしていたものと考えられます。
売手からすれば、買手が手数料を差し引いて支払ってきたうえに、消費税分を消費税として処理する為に、きちんとした適格返還請求書を作成し買手に交付しなければならないというのでは事務処理負担が重くなります。
しかしながら、税務通信誌が財務省担当官へインタビューしたところによると、値引と整理する場合に、きちんとした適格返還請求書を発行する代わりに、メールによる簡素な対応も可能とのことです。
税務通信誌に記載されていた文例によれば、請求日付、入金日付、差額について振込手数料相当額として値引きとして処理する旨、会社名、登録番号を明示する数行のメールで構わないようです。
インボイス制度導入後、今まで振込手数料を差し引いて振り込んできた買手が突然上記のようなメールを受け取っても何のこと?という感じだと思いますが、きちんとした適格返還請求書を作成して送付することに比べれば事務処理は簡素にすむと考えられます(売手からすると、振込手数料を差し引いて振り込んでくることを追認するようで抵抗はありますが、差額を回収しないのであれば致し方ありません)。
なお、振込差額を支払手数料として課税仕入に計上する場合には、買手が金融機関から受領した振込サービスに係る適格請求書と立替金精算書の交付を受け、これを保存することが必要となるとされています。買手から「金融機関から受領した振込サービスに係る適格請求書と立替金精算書の交付」などというのは現実的ではないので、現時点においてこちらを選択する余地はあまりないと考えられます。
きちんとした適格返還請求書を作成し買手に交付しなければならないことと比較すれば、メールで対応できるというのはありがたいですが、それにしても本音としては馬鹿らしい作業ではあります。振込手数料は1000円未満であることがほとんどですので、3万円とはいわなくても数千円未満のものには例外的な取り扱いを認めるというような方向になってもらいたいものです。