監査法人社員の配偶者の関係に係る業務制限が見直されるそうです
現行の公認会計士法では、監査法人の社員の配偶者が役員等になっている会社については、当該監査法人はその会社の監査をすることができないこととされています。
親族がいる会社の監査報告書にサインできないというのは当然としても、所属する監査法人が監査するができないというのは、厳しいルールだと思いますが外観的な独立性を確保するという観点でそのようなルールになっているということだと考えられます。現行法の規定を確認しておくと以下のように定められています。
<公認会計士法>
(特定の事項についての業務の制限)
第三十四条の十一 監査法人は、財務書類のうち、次の各号のいずれかに該当するものについては、第二条第一項の業務を行つてはならない。
(中略)
二 監査法人の社員のうちに会社その他の者と第二十四条第一項第一号に規定する関係を有する者がある場合における当該会社その他の者の財務書類
(以下省略)
(特定の事項についての業務の制限)
第二十四条 公認会計士は、財務書類のうち、次の各号の一に該当するものについては、第二条第一項の業務を行なつてはならない。
一 公認会計士又はその配偶者が、役員、これに準ずるもの若しくは財務に関する事務の責任ある担当者であり、又は過去一年以内にこれらの者であつた会社その他の者の財務書類
(以下省略)
会計士法上「役員」はとくに定義されていませんので、社外役員であっても該当することになりますし、「財務に関する事務の責任ある担当者」であってもひっかかることになります。特に「財務に関する事務の責任ある担当者」は「財務に関する事務の責任者」ではなく「責任ある担当者」とされていることから、幅広な定義となっていることがわかります。
過去において配偶者が「役員、これに準ずるもの若しくは財務に関する事務の責任ある担当者」になってしまったから、監査が継続できなくなったというケースがあったのかはわかりませんが、おそらくそのような場合には、被監査会社で当該配偶者はそのようなポジションに昇進・配置しないようにしたのだろうと推測されます。
一方で、監査法人サイドでは、人事で影響がでているそうです(T&A master No.908「監査法人社員の配偶者の業務制限見直し」)。「例えば、夫が被監査会社の役員等に就任している場合には、妻の公認会計士は社員になることができ」ず、「女性公認会計士の進出を阻害しているとの批判がある」とされています。
このような点をふまえ、鈴木金融担当大臣より公認会計士制度の見直しが諮問され、政府は来年の通常国会に公認会計士法改正法案を提出する考えとのことです。