プライム市場上場会社の英文開示実施率が92.1%に上昇
東証が2022年8月3日に「英文開示実施状況調査集計レポート(2022年7月)」を公表しました。
上記調査は2022年7月14日現在の回答内容を基に集計されたものとされていますが、プライム市場上場会社の回答率は100%となっています(スタンダード:78.8%、グロース市場65.8%)。
まず、プライム市場上場会社における英文開示実施率については、2021年12月から6.3ポイント増加し92.1%となりました。全市場でみると、21年12月から3.2ポイント増加の56%となっています。
どのような資料の英文開示を実施しているかについては、実施率の多い順に以下のようになっています。なお、以下の実施率はプライム市場の会社でのものですが、全市場でみても実施率の多い順番に変化はありません。また、カッコ内は前年末比の数値となっています。
決算短信 77.1%(+9.3pt)
株主総会招集通知(通知本文) 76.1%(+11.9pt)
IR説明資料 61.1%(+3.5pt)
適時開示資料(決算短信除く) 38.7%(+2.3pt)
CG報告書 24.5%(+2.3pt)
株主総会招集通知(事業報告) 22.7%(+2.1pt)
有価証券報告書 13.3%(+0.8pt)
決算短信、株主総会招集通知(通知本文)、IR説明資料の三つで英文開示を実施しているというケースが多いようです。なお、株主総会招集通知については通知本文と事業報告で区分されて項目が設定されていますが、決算短信については日本語と同一の内容を英訳したものであるのか否かについては言及されていませんでした。
英文資料の開示時期については、日本語と同時の開示が42.4%、同日の開示が10.9%、翌日以降の開示が46.7%となっています。日本語と同時に開示している会社の割合は、2021年12月は44.9%であったので2.5pt減少していますが、新たに英文短信を開示する会社が増加したことによる影響であると推測されます。
株主昇給通知の開示タイミングは日本語と同時が58.6%、同日が10.6%と短信よりも同日中の開示が短信よりも高い割合となっていますが、日本語ができてからの英訳の準備期間を考慮すると傾向としては理解できます。
一方、その他の適時開示資料について英文資料を開示している会社では、日本語と同時が57.1%、同日が13.2%で同日中の開示という括りでみると70.3%と高くなっています。適時開示の性格からすると、同日で開示する割合が招集通知や短信よりも低くなっても不思議ではないように感じますが、現時点ではプライム市場でも4割弱の会社しか実施していないことを考えると、英文での開示への対応力が高い会社が多く、結果的に同日中の開示の割合も高くなっているということなのではないかと推測されます。
なお、東証が昨年実施した投資家アンケートでは7割超が適時開示資料(決算短信を除く)や有価証券報告書については英文開示が必要としていたとのことです。特に有価証券報告書については上記のとおりプライム市場上場会社でも約13%しか対応していないというのが現状となっています。
プライム上場会社であっても、海外投資家の割合によって英文開示への取組みに対する力の入れ具合は異なってよいと思いますが、そうはいっても大多数の会社が取り組むようになっているという現状はおさえておく必要がありそうです。