18監査事務所が会計士資格を誤表記で有報訂正が必要らしい
業界的に面倒なことになっているらしいという噂は聞いていましたが、2022年12月26日に公認会計士協会から「公認会計士資格の適切な表記と集計の要請について」という会長声明が公表されました。
これは、公認会計士登録がされていないにもかかわらず、公認会計士として書類上記載がされている事案が確認されたことをうけて、上場会社を担当しているすべての監査事務所(135事務所)に対して以下の点の自主点検を求めた結果に関するものです。
①直近期の有報等の法定書類・被監査会社への提出資料の誤記載の有無
②公認会計士でない者が名刺等で公認会計士と名乗っていないか
上記の自主点検の結果、135事務所のうち18事務所から提出資料の誤記載が検出されたと報告があり、さらにこのうち4事務所(トーマツ、EY新日本、あずさ、太陽)では、本人がご記載を認識していた事例があったことが明らかとなったとのことです(T&A master No.961)。
また、2事務所(あずさ、三優)では名刺等で公認会計士でない者が公認会計士を名乗っていた表記の誤りを確認したとのことです。
提出資料の誤記載の原因としては以下が挙げられたとのことです。
①公認会計士の名称を使用することの重要性の欠如
②法定書類の重要性の認識不足
③公認会計士登録と非登録者が混在している職位があったため、誤認を生じやすい状況が存在していたこと
④資格情報を確認する必要があることの周知不足
大手監査法人はITに投資して監査品質を高めているというような説明をよくしているので、これくらいきちんと把握できないのかという意見はあるでしょうが、一方でこのための情報を集計するための仕組みなんかないだろうなという気もします。おそらく、地味に数を数えているだけなのではないかと思われます。
そうだとすると、アサインされるスタッフが頻繁に変わったり、サポートスタッフ的な無資格者を使っていたり、会計士登録した時期がイレギュラーだったりするとカウントを間違えるというのはあっても不思議ではありません。
被監査会社としては、監査法人から報告された人数を有報に記載するだけなので、間違った数値を報告されれば、そのまま開示してしまうのが普通だと思います。特に、リモートでの作業が増えており、メールでやりとりしていても顔が思い浮かばないというケースも増えているので、会計士か否かおよび数なんかは確認しようという気にすらなりません。
監査補助者の構成を記載しなければならないとされているので、記載する必要はあるわけですが、個人的にこれってそんなに重要なのだろうか?と、いつも感じています。確かに、ものすごく問題がありそうな会社や大規模な会社に関与している人数が少ないと、きちんと監査しているのかという疑念が生じますが、人数が多くても少しだけ関与した人数が含まれていることもあるので人数だけではなんとも言えないというのが実態だと考えられます。監査の総時間数および、社員およびマネージャークラスが関与した時間、非資格者に作業させた時間などを記載したほうが意味があるのではないでしょうか。
と、個人的には重要性をあまり感じていない記載なので、仮に監査法人から報告した数に誤りがあったと報告があっても、訂正報告をだすほどでもないかなという気がしていましたが、日本公認会計士協会の会長が「被監査会社の有価証券報告書訂正に繋がるものであることから事態を深刻に受け止め、謝罪するとともに、当該監査事務所に対して再発防止策の作成と実行を要請し、協会に報告するよう、会則に基づく勧告を行ったことを明らかにした」とのことですので、仮に監査法人から有報に記載した数値が誤っていたという報告があった場合には訂正報告が必要ということのようです。