海外の会社への会社分割はできる?
会社分割はそれほど頻繁に行うものではありませんが、とはいえそれほど珍しいものでもありません。ところで、特定の事業等を海外の子会社等へ会社分割することはできるのだろうかというのが問題となります。
会社分割は会社法に基づくものなので、普通に考えると、海外の会社への会社分割はできないのではないかと思いつつも、明確にできないと記載されているのも見た記憶がありません。そこで、海外の会社への会社分割が可能なのかを確認してみることにしました。
調べてみると、この点について会社分割ハンドブック〔第2版〕で以下のように述べられていました。
日本の企業のグローバルな展開との関係で重要な問題となるのは、会社法に基づく会社分割を外国会社との間でも行うことが可能か否かである。同様の問題は、会社分割が導入される前から合併について論じられてきており、かつては否定的な見解が支配的であった。しかし、近時は少なくともその一般的な可能性については肯定する考え方も有力に主張されているようである。この問題は、日本の会社法だけの問題ではなく、会社分割の相手方となる外国会社に適用される設立準拠法の問題でもあり、日本の会社法の問題として一般的な可能性を肯定したとしても、実務上は難しい問題が多数残るように思われる。今後の検討課題であろう。
肯定的な意見として、株式会社法第6版(江頭憲治郎 著)では、合併について以下のように述べられています。
日本法に基づき設立された株式会社と外国会社との合併につき、規定は欠缺しているが、外国会社を「日本において成立する同種の法人」(民法35条2項)と同じ(たとえば、ドイツの有限会社は日本の特例有限会社と同一とみる)と解した上で、合併が可能とすべきである。
さらに、理由付けとして以下のように記載されています。
外国会社は、会社法にいう「会社」(会社748条)でないとか、登記所に審査能力がないという理由で、外国会社との合併を認めない見解があるが、それは、合併の可能性を否定する十分な理由ではない。日本の当時会社の株主・債権者で、外国会社と合併することにより不利益を被ると思う者は、株式買取請求権を行使しまたは債権者の異議手続において異議を述べることができるから、抵触法上は、各当時会社の従属法が定める手続き要件が充足されることにより合併は成立すると解して差し支えない。(以下省略)
上記の通り、会社法上、外国会社との合併を肯定する見解もでてきているものの、合併については三角合併が認められるようになっていることから「外国会社を当時会社とする合併を行いたいとのニーズの相当部分は解決されると思われる」とされていることから、会社分割への議論はあまり進展していないようです。
というわけで、現実問題としては、外国会社への会社分割は難しいと考えておくのが無難なようです。