扶養控除等申告書におけるマイナンバーの取扱い(その2)
前回は扶養控除等(異動)申告書について、原則的な個人番号の取扱いについて記載しましたので、今回は実務上の対応方法として考えられる別の方法について確認していきます。
2.余白部分に文言を記載し、個人番号の記載を省略する方法
これは国税庁の源泉所得税関係Q&A1-5-1で明らかにされている方法です。関連する部分を抜粋すると以下のように記載されています。
給与支払者と従業員との間での合意に基づき、従業員が扶養控除等申告書の余白に「マイナンバー(個人番号)については給与支払者に提供済みのマイナンバー(個人番号)と相違ない」旨を記載した上で、給与支払者において、既に提供を受けている従業員等のマイナンバー(個人番号)を確認し、確認した旨を扶養控除等申告書に表示するのであれば、扶養控除等申告書の提出時に従業員等のマイナンバー(個人番号)を記載しなくても差し支えありません。
なお、この方式を採用している場合に、後日税務書から扶養控除等申告書の提出を求められた場合には、「給与支払者は扶養控除等申告書に従業員等のマイナンバー(個人番号)を付記して提出する必要があります」(上記Q&A 注3)とされていますので、個人番号を記載して提出することとなります。「給与支払者は」とされていますので、この場合は、会社の担当者が従業員の個人番号を記載して提出して問題ないということになります。
この余白文言記載方式を採用するための要件をQ&Aからピックアップすると以下のようになります。
- 従業員と合意があること
- 従業員が余白に「給与支払者に提供済みのマイナンバー(個人番号)と相違ない」旨を記載すること
- 給与支払者が、既に収集している個人番号を確認すること
- 確認した旨を扶養控除申告書に表示すること
2-1 文言をあらかじめ申告書に記載(印刷やスタンプで押印)しておくことは可能か?
個人番号が記載されていると申告書の取扱い警戒レベルが格段に高まるので、実務担当者としては個人番号が記載されない方がありがたいというのが正直なところではないかと思います。
しかしながら一方で、従業員にQ&Aで記載されているような文言の記載を求めると、文言の記載を失念する従業員がでてくることが想定されます。そこで担当者が考えることは、あらかじめ余白に文言を印字した申告書を配布して、従業員に個人番号以外の必要事項を記入してもらうことは可能かという点です。
この点、この取扱いが認められるのは「従業員が余白に「給与支払者に提供済みのマイナンバー(個人番号)と相違ない」旨を記載すること」が必要とされていますので、「従業員が」という部分を素直に解釈すると不可ということになってしまいます。
しかしながら、源泉所得税関係Q1-8「給与支払者が従業員等のマイナンバー(個人番号)を印字した扶養控除等申告書を従業員に交付して、従業員がその内容を確認した上で給与支払者に提出するという方法は可能ですか。」について、一定の条件はあるものの、「従業員本人と給与支払者の間で合意しているのであれば、ご質問による方法をとることも、番号法上可能であると解されます。」とされていることからすれば、このような文言をプレ印字することは認められると解釈するのが妥当だと考えられます(条件付きとはいえ、個人番号のプレ印字が可能なのに、単なる文言のプレ印字が禁止されることはないはず)。
この点については、ビジネスガイド2016年11月号の「マイナンバー制度最新実務Q&A」(弁護士 渡邉雅之氏)においても、文言をプレ印字することや文言が記載されたシールを添付する方法、申告書の別紙を作成する方法も考えられると記載されています。
よって、プレ印字等は可能と考えてよいと思いますが、「従業員が」という部分を明確にするという観点からすると、プレ印字した文言の横に従業員に押印を求めたほうが無難と考えられます。
また、忘れがちですが、給与支払者が確認した旨を扶養控除申告書に表示することも要件の一つとして掲げられていますので、プレ印字する際に、会社側のチェック欄を設けておくことも必要と考えられます。
上記の方法の他、個人番号のプレ印字方式がありますが、これは次回とします。