平成28年度税制改正に伴いすべての建附の減価償却方法を定率法から定額法に変更する場合の取扱い
平成28年度税制改正によって、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備および構築物の減価償却方法が定額法に一本化されましたが、平成28年度税制改正では届出関係について経過措置が設けられています。
税務上の減価償却方法を変更しようとする場合の原則的な取扱いは、新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに、その旨、変更しようとする理由その他財務省令で定める事項を記載した申請害を納税地の所轄税務署長に提出して、その承認を受けなければならないとなっています(法令52条1項、2項)。
一方で、平成28年度税制改正の経過措置では、平成28年4月1日以後に最初に終了する事業年度について、確定申告書(中間申告書を提出する場合は中間申告書)の提出期限までに、建物附属設備、構築物について現に選定している償却方法を変更する旨の届出書を提出した場合は、その届出書をもって変更承認申請書の提出とみなさされ、承認があったものとみなされるとされています。
したがって、3月決算会社の場合、今から届出書を出せば、従来定率法を採用していた建物附属設備・構築物を含め、減価償却方法を定額法に一本化することができます。
もっとも、会計監査をうけている会社では、平成28年度税制改正により平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備、構築物の減価償却方法を定率法から定額法に変更することは、法令等の改正に準じたものと取り扱われることとされていますが、従来定率法で減価償却していた建物附属設備まで定率法に変更するのは自発的な会計方針の変更として取り扱われるため、正当な理由がなければ変更が認められないこととなります。
では、減価償却方法を変更することに問題がない場合、定率法から定額法に変更後、税務上の減価償却費等はどのように計算されるのかですが、以下のように計算するとされています(法人税基本通達7-4-4)。
まず、取得価額または残存価額は、当該減価償却資産の取得の時期に応じて次のイまたはロに定める価額によるとされています。
イ 平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産
その変更した事業年度開始の日における帳簿価額を取得価額とみなし、実際の取得価額の10%相当額を残存価額とする。
ロ 平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産
その変更した事業年度開始の日における帳簿価額を取得価額とみなす。
次に、耐用年数は、減価償却資産の種類の異なるごとに、法人の選択により、次のイ又はロに定める年数によるとされています。
イ 当該減価償却資産について定められている耐用年数
ロ 当該減価償却資産について定められている耐用年数から採用していた償却方法に応じた経過年数(その変更をした事業年度開始の日における帳簿価額を実際の取得価額をもって除して得た割合に応ずる当該耐用年数に係る未償却残額割合に対応する経過年数)を控除した年数(その年数が2年に満たない場合には、2年)
要は、その資産の法定耐用年数(上記イ)か法定耐用年数ー経過年数(上記ロ)のいずれかを選択できるということになっています。
そして、上記でいう「経過年数」は、変更年度の該当資産の期首帳簿価額÷その資産の取得原価で未償却割合を計算し、「定率法未償却残額」から耐用年数を求めるということになっています。ここでの注意点は、当該資産の取得時期によって旧定率法、250%定率法、200%定率法と償却方法が異なる可能性があるので、例えば旧定率法であれば付表7(1)の「定率法未償却残額」で確認する必要があるということになります。
減価償却資産の管理ソフトを利用していれば、定率法と定額法が混在していても特に手間ということもないので、あえて変更する必要性は感じませんが、同じ種類の資産は同じ償却方法が採用されているというは分かりやすいということであれば検討の余地はあるかもしれません。