タカタ株が5連騰でストップ高-なぜ?
東証が上場廃止決定(6月26日)後、一時15円を付けた株価が、直近5連騰で本日の終値はストップ高で3桁を回復し105円となりました。
昨日新たに米国で270万個のリコールと報道され、普通に考えると下落しそうな株価が、上昇しています。
タカタは民事再生手続きの開始を申請しており、東証のHPにも2017年6月26日に「上場廃止等の決定:タカタ(株)」と記載されていますので、上場廃止は既定路線であるにもかかわらずこの株価の上昇はなんなんだろうというのが気になります。
まず、民事再生手続きの開始を申請しても上場廃止にならないことがあるのだろうかという点ですが、原則としては「法律の規定に基づく会社の破産手続、再生手続若しくは更生手続を必要とするに至った場合又はこれに準ずる状態になった場合」は上場廃止基準に抵触することとなっています(上場規程第601条)。
ただし、民事再生手続きの開始を申請したら絶対に上場廃止になるわけではなく、上場規程601条によれば「施行規則で定める再建計画の開示を行った場合には、当該再建計画を開示した日の翌日から起算して1か月間の時価総額が10億円以上」であれば上場を維持することも可能となっています。
上場を維持するために施行規則では以下のような要件が掲げられています(経営財務3317号 「民事再生と上場廃止」)。
①再生計画は裁判所の認可を得られる見込があるものであること。
②当該再建計画に「当該上場有価証券の全部を消却するものでないこと」、「再建計画が裁判所の認可を得られる見込がある旨」及びその理由等が記載されていること
③当該再建計画に上場廃止の原因となる事項が記載されているなど公益または投資者保護の観点から適当でないと認められるものでないこと
タカタの場合は、東証のHPの上場廃止の決定の理由欄に「なお、同社は当取引所に対して、再建計画等の審査に係る申請を行わない予定です。」と記載されており、上場を維持を判断する上で必要となる再建計画の審査の申請を行わない予定なので、上場廃止が決定されたということになっています。
予定なので、やはり再建計画等の審査を申請するというようなことが可能なのかは定かではありませんが、既に上場廃止を前提に意思決定をした株主も多くいるであろうことに加え、報道されている債務金額からすると常識的に考えると予定が変更される可能性は極めて低いと考えるのが普通だと思われます。
Bloombergが配信した「タカタ株5連騰、一時100円台回復-上場廃止目前にマネーゲーム加熱」という記事では日本アジア証券の株式ストラテジスト、清水三津雄氏の話として”。タカタの場合は「ホワイトナイト(友好的買収者)の出現なども含めてさまざまな思惑のもとで売買されている。投資ではなく投機、博打だ」と話した”と記載されています。
また同記事では「タカタ株をめぐっては英ヘッジファンドのランズダウン・パートナーズが空売り攻勢を強め、借株数が創業家など大株主の保有株に並ぶ規模まで拡大していたが、ブルームバーグのデータによると12日現在では主要株主の項目から姿を消している。」とも記載されており、この買い戻しで株価が上昇しただけなのかもしれません。
なお、経営財務の記事によると、過去に民事再生手続き開始の申立て後、上場を維持しながら事業再建を行ったという事例として確認できたのは2010年のプロパスト(JASDAQ)のみとのことです。
「タカタ叩きは、ある種の狂言。世界の自動車業界はタカタ1社に罪を押し付け、エアバッグが抱える本質的な問題に蓋をしようとしている」(FACTA2017年1月号 あなたの車も「エアバッグが危ない」)というような意見もあるものの、ここまできてしまうと最終的にはJALと同様100%減資となると考えるのが普通のように思います。
機関が笑い個人が泣くということにならないことを願うばかりです。