法律を読む技術・学ぶ技術(その2)
前回の続きです。元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術[改訂第3版]の中から、法律を理解する上で基礎的な知識となる部分の確認を行っていきます。
4.法律・政令・省令・条例
漠然と法律といった場合、政省令や政令も含めたものをイメージして使用していることもあると思いますが、厳密にとらえると「法律」は国会を通じて成立したもので、「~法」や「~に関する法律」などのタイトルがついているものとなります。
次に政令と省令ですが、政令は法律からの委任規定に基づき内閣が定めるものとなっています。細かな内容であっても法律にすべてが書いてあるほうが、確認はしやすいように思いますが、法律がやたらと長くなったり、不都合があって改正を行うにも国会での審議などが必要になるということから、「政令で定めるところにより~」というように定めておくというのが無難ということなのでと考えられます。
省令は、各省庁の大臣が、その省庁限りで定めるものとされています。基本的に政令より更に細かいことを定めるもので、〇〇法施行規則というようなものがこれに当たります。
なお、「内閣府令」というものも目にしますが、これは「省令と同様のものと考えて下さい」とのことです。
最後に条例は、地方公共団体が、議会を通じて定めた法とされています。条例は、その地方公共団体の区域だけに適用されるものですが、条例は「法律の範囲内で制定することができる」(憲法94条)とされています。
5.控訴と上告
「控訴」は、一審の判決に不満があるときに、さらに裁判を求める不服申立てのことをいいます。一方、「上告」は二審の判決にも不満があるときにさらに裁判を求める不服申立てのことを意味します。
というわけで地裁→高裁時が控訴で、高裁→最高裁時が上告ということになります。これは今まで正確に自分で使い分けられていた自信がありません。
6.原告と被告、上告人と被上告人
原告は訴えた方、被告は訴えられた方となります。また、上告した方が上告人で、上告を受けて立つ方が被上告人となります。これは、「被」という漢字から特に難しくはないと思いますが、書籍で紹介されていた事項で、いわれてみればと思ったのが、原告などの表記です。
以前は、判例の紹介では甲や乙などの表記が普通でしたが、最近ではXとかYというような表記をよく見かけるようになったと思っていましたが、現在では原告を「X」、被告を「Y}、当事者以外の関係者をA,B、Cとすることが一般的となっているとのことです。
甲乙の表記では原告を「甲」、被告を「乙」としていたので、これも覚えておくと役に立つかも知れません。
7.「最大判」と「最判」
これも言われてみるとなんだろうというものかもしれませんが、「最大判」は「最高裁大法廷判決」、「最判」は「最高裁小法廷判決」を意味します。いずれも最高裁の判決なのだと理解しておいて問題はないと思いますが、両者は何が異なるのかを聞かれると説明に窮してしまいそうです。
最高裁というと大きなイメージがありますが、実際のところ通常は小法廷で事件が処理されるとのことです。しかしながら、以下のようなケースでは大法廷で事件が処理されるとのことです。
①初めて法令が憲法に適合するか判断される場合
②違憲判決をする場合
③憲法や法令についての解釈を以前と変更するとき
8.反対意見、補足意見、意見
最高裁の判決に裁判官の意見が付されたと報道されているのを耳にした方も多くいると思いますが、これは最高裁の判決といえども、多数決原理が働いて決定されるということから生じます。
最高裁の裁判書には、各裁判官の意見を表示しなければならないとされており、法廷として意見と異なる意見の裁判官がいる場合には、その意見を判決文に載せなければなりません。この趣旨は、最高裁の裁判官がどのような意見をもっているのかを国民に知らせることで、衆議院選挙と同時に行われる「最高裁判所裁判官国民審査」で辞めさせたい裁判官を辞めさせることを可能とすることにあるとのことです。
平成26年12月の「最高裁判所裁判官国民審査」結果を初めて確認してみましたが、飛び抜けて「罷免を可とする投票数」の割合が高いという裁判官はいないものの、概ね8%程度は「罷免を可とする投票数」となっていました。
「反対意見」は、その名の通り、法廷の結論(主文)に反対する意見です。結論自体が異なるということなので、あまりないのだと思いますが「古い判決ではありますが、ある裁判官が別な裁判官のガチンコ批判を展開している少数意見を見たことがあります」とのことなので、反対意見の付された判例を読んでみるのも面白いかも知れません。
「補足意見」は、法廷の結論に賛成し、理由付けにも賛成した上で、さらに説明を加えるものです。
最後に「意見」は、法廷意見の結論に賛成であるものの、理由付けに反対である場合に表明されるものです。最高裁判所の裁判官をやっているレベルの方からすれば、結論は同じでも理由付けが異なれば、実質的には「反対意見」のようなものなのかもしれません。