電子申告義務化に向け、簡素化が図られる可能性あり
2017年6月30日に財務省から、国税における行政手続コスト削減のための基本計画が公表されています。
この計画によれば、電子申告の義務化が実現されることを前提に、大法人の法人税・消費税の申告について、電子申告(e-Tax)の利用率100%、中小法人の法人税・消費税の申告について、電子申告の利用率85%以上(将来的には100%)という目標値が掲げられています。
平成30年度税制改正で議論される見込であり、「最速のケースでは平成30年分の確定申告から電子申告が求められる可能性がある」(T&A master No.698 e-tax「義務化」に向けた実務上の論点)とのことです。
上記記事では、電子申告の対象書類の範囲がどうなるのかが、電子申告義務化の早期実現のカギを握るとされています。すなわち、「現状は紙で提出されることが多い別表の内訳明細書、財務諸表や勘定科目内訳明細書なども含めすべての添付書類をe-Taxで提出することとなった場合、大規模なシステム改修を迫られる企業が出てくることも予想され」るとされています。
企業側で生じるコストもそれなりに大きくなることが見込まれるので、改修コストは即時費用化を認めるというような税制面での手当てがあってもよいのではないかと思います。
また、電子申告に関連するものとして、T&A master No.700に「社長交代で電子証明書の取得間に合わず」という記事が掲載されていました。
これは今に始まったことではないはずですが、確定申告期限と定時株主総会が近接する上場会社等では、株主総会で代わった代表の電子証明書の取得が間に合わないケースがあるとのことです。全ての電子証明書発行機関で必要書類がすべて同じかはわかりませんが、電子証明書の取得にあたっては登記事項証明書の提出が求められるとすると、総会開催日程が申告期限の月末に近いと電子証明書の取得が間に合わないというのもわかります。
会社の代表者は毎年替わるようなものではないので、現在であれば代表者が代わった期は電子申告は利用しなければよいのだと思いますが、義務化された場合には、他の選択肢がなくなるので電子証明書の取得が間に合わないので申告できないということでは困ります。
そのため、「電子申告を義務化する際には、何らかの手当てが必要となる可能性がありそうだ」(T&A master No.700)とされています。前もって電子証明書を取得できるようにするという方法や、特例として旧証明書を使用できるとする方法など考えられますが、一番簡単なのは変更前の証明書を利用できるとすることなのではないかと思います。
ちなみに、電子署名等を行わなかった場合の罰則は「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」となっています。感覚的には罰金だけかなという気がするかもしれませんが、思いのほか重い罰則となっています。
また、最初に義務化されることが見込まれる「大法人」の定義については、”基本的に「資本金1億円超」の法人とされる可能性が高い”とされていますが、大法人の子会社の中小法人や連結子法人で大会社の地方税の申告をどう取り扱うかなどは現時点で不明であり、これらの取扱によって影響を受ける範囲が大きく変化するため今後の展開に注意が必要です。