扶養控除控除等申告書の電子保存も可能
生命保険料の控除証明書など年末調整に必要な書類が配達されて来る時期となり、会社の年末調整担当者には憂鬱な時期となりましたが、年末調整時に一緒に従業員に配布される扶養控除等申告書は「電子データ」での保存も可能とのことです(税務通信 3479号 税務の動向)。
個人的には紙で配っているところしか見たことがなかったので、そういうものなのだと思っていましたが、「『源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供に関する特例制度(所法198②等)』を適用すれば、従業員から提供される”扶養控除等申告書に記載すべき事項”を、会社側が「電子データ」で保存することが認められる」とのことです。
上記の「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供に関する特例制度」は、会社が所轄税務署長の承認を受ければ、紙の扶養控除等申告書に代えて、“扶養控除等申告書に記載すべき事項”を電磁的方法(電子データ)により提供を受けることができるというものです。
所得税法198条(給与所得者の源泉徴収に関する申告書の提出時期等の特例)2項では以下のとおり規定されています。
2 第194条から第196条までに規定する給与等の支払を受ける居住者は、これらの規定による申告書の提出の際に経由すべき給与等の支払者がその給与等に係る所得税の第17条(源泉徴収に係る所得税の納税地)の規定による納税地の所轄税務署長の承認を受けている場合には、当該申告書の提出に代えて、当該給与等の支払者に対し、当該申告書に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて財務省令で定めるものをいう。第203条第4項(退職所得の受給に関する申告書)及び第203条の5第5項(公的年金等の受給者の扶養親族等申告書)において同じ。)により提供することができる。
紙をスキャナ保存するという話なのかと思いましたが、そもそも最初からデータでやり取りすることができるというのは、従業員が多い会社や拠点が複数存在し本社で一括して管理しているようなケースではメリットが大きいのではないかと思います。なお、電子データで提供を受けたものを電子データのまま保存できる根拠としては 所得税法施行規則第76条の3 の括弧書きとのことです。
所得税法施行規則第76条の3を確認してみると以下のように規定されています。
第76条の3 給与所得者の源泉徴収に関する申告書の保存
法第194条から第196条まで(給与所得者の源泉徴収に関する申告書)に規定する給与等の支払者がその給与等の支払を受ける居住者から受理したこれらの規定による申告書(法第198条第2項(給与所得者の源泉徴収に関する申告書の提出時期等の特例)の規定の適用により当該給与等の支払者が提供を受けた当該申告書に記載すべき事項を含む。以下この条において「申告書等」という。)は、これらの規定に規定する税務署長が当該給与等の支払者に対しその提出を求めるまでの間、当該給与等の支払者が保存するものとする。(以下省略)
確かに198条第2項の特例を適用し提供を受けた「当該申告書に記載すべき事項を含む」とされています。この条文だけではこれがデータを意味するというのは理解できませんが、法第198条第2項をみれば電磁的方法で提供されたものとわかるという関係になっています。
この特例を受けるための手続きとしては、所轄税務署長からの承認を受けることが必要とされているものの、いわゆる「みなし承認」となっており、承認申請書を提出した月の翌月末日までに承認がない場合等には、承認があったものとみなされます( 所令319の2 ④)。しかも、提出期限が設けられていないため、10月中に申請書を提出し、11月末までに「承認しないことの決定」等がなければ、今年から同制度を適用することが可能となります。これにより、平成30年分の扶養控除等申告書や、来年の年末調整時に提出を受ける「配偶者控除等申告書」が適用対象となります。
なお、一度承認を受ければ、原則として取りやめに関する届出書を提出しない限り、この特例は継続されます。
事務作業の効率面から検討してみる価値はあるのではないでしょうか。