平成30年税制改正要望の自社株対価TOBは親会社株式も対象になる可能性があるらしい
T&A master No.714に「自社株対価TOB、親会社株を対象も」という記事が掲載されていました。
平成30年度税制改正では、自社株式等を対価とした株式取得に応じた株主の株式譲渡益(法人)・譲渡所得(個人)への課税を繰り延べる措置を法人税に導入することが検討される方向となっていますが、この対価は必ずしも自社株式だけではなく(ゆえに自己株式「等」となっている)、「例えば自社の100%親会社株式などは「自社株式等」の範囲に含まれる可能性があるだろう」とのことです。
TOB時の株価はプレミアムがつくのが通常であり、個人株主の立場からすれば、自分が反対しても大勢に影響はなく、現行法では含み損益が実現してしまう状況にありますので、課税が繰り延べられることとなるのはありがたい改正だと思います。
しかしながら一方で、自社株対価TOBに100%親会社株式が使用可能になると、外国企業が日本の100%子会社を通じて日本企業にTOBを仕掛けてくるケースが増加するのではないかと懸念する声があるとのことです。
つまり、「外国企業の株式を「自社株等対価」とすることが可能となれば、外国企業が日本に子会社、場合によってはペーパーカンパニーを設立して、その子会社が当該外国企業(親会社)株式を対価としたTOBを日本企業に仕掛ける」ということが増加するのではないかという懸念です。
上記の改正は経済産業省が要望したもので、「自社株式等を対価とした株式取得による事業再編の円滑化措置」という名称が使われており、事業再編を円滑にすすめることを目的とするものであるといえます。個人的には、事業再編がすすんで、買収された会社が成長するのであれば、買主が外資であっても問題ないと考える一方で、M&Aでしか成長できなくなっている国内企業がM&Aを模索しているため、最近の売り物は価格が高騰しているという話も耳にします。このような状況のなかで、外資も買収に算入してくるとすると、さらに価格が高くなってしまうということもあるかもしれません。
しかしながら、会社法が改正され三角合併が認められることとなった当時も同じような話がありましたが、結果的にはほとんど影響はなかったように思いますので、上記のような改正が実現しても、外資による買収が頻発するということはないのではないかと思います。
いずれにしても現段階では未確定の状況にありますので、平成30年度税制改正が実際にどのように決着するのかには注意が必要です。