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子会社である法人が留意すべき法人税実務

税務通信3472号から複数回にわたって、あいわ税理士法人の税理士3名が、「グループ子法人が留意すべき法人課税実務」という連載(現在第4回まで終了)で記事を連載しています。

グループ企業のうち子会社だけに関与するというな場合、うっかり間違えてしまう可能性があることもあると思いますので、上記連載の第1回~3回で取り上げられていた事項の中から、間違えないように最低限確認しておいたほうがよいと思われる事項を取り上げます。

1.優遇措置の対象となる「中小法人等」

「中小法人等」に該当する場合には年800万円以下の所得について、15%の軽減税率の適用を受けることができるというような各種優遇措置を受けることが可能となりますが、普通法人に限定すると、「中小法人等」とは、期末の資本金の額が1億円以下の法人で、資本金の額が5億円以上の大法人による完全支配関係がない法人が中小法人等に該当します。

期末の資本金の金額が1億円以下という点にばかり注意がいくと、大法人による完全支配関係がある法人であっても間違って優遇措置の適用があると間違ってしまう可能性があるので要注意です。

ここで「大法人による完全支配関係」とは、株式を直接保有されているか、間接保有されているかに和変わらず、大法人に100%支配されている関係とされています。なお、大法人の100%支配されているか否かの判定は事業年度末で判定することとされています。

そして大法人とは、資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人若しくは相互会社又は受託法人をいうとされています。

また、平成29年度税制改正によって、平成31年4月1日以後開始事業年度から、資本金基準に加えて所得基準が導入されることとなっていますが、この点については後述します。

2.直接の100%親会社の資本金が1000万円であっても中小法人特例が受けられないこともある

直接の100%親会社の資本金の額が5億円未満であるようなケースもそれだけで安心してはなりません。というのは、自社が孫会社に当たる場合、つまり、直接の親会社に100%親会社があって、その会社の資本金の額が5億円以上である場合は、自社は「中小法人等」には該当しないこととなります。

直接の親会社までは確認しても、さらにその親会社まで確認することを失念するということは考えられるので、要注意です。内国法人が、100%関係にある親会社や子会社、兄弟会社などを有する場合には、法人税申告書に出資関係図を添付する必要があるとされていますので、直近の申告書に出資関係図が添付されていないかを確認してみるとよいと思われます。

3.「中小法人等」と「中小企業者等」

「中小法人等」と間違えやすいものとして「中小企業者等」があります。「中小企業者等」にも税務上優遇措置が認められており、例えば、取得価額が30万円未満の減価償却資産につき,年300万円を限度として損金算入が認められるというような優遇措置があります。

「中小企業者等」とは、「普通法人に限定すると、一般的には、資本金の額が1億円以下の法人で、資本金の額が1億円超の大規模法人1社に発行済株式の2分の1以上を所有されていない、又は、2以上の大規模法人に発行済株式の3分の2以上を所有されていない法人が、中小企業者等に該当する」とされています。

ここで「大規模法人」とは、資本金の額若しくは出資金の額が1億円超の法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人超の法人を意味します。

「中小法人等」の「大法人」の定義と比較すると資本金の額が1億円超となっていることと、従業員の数の要件が加わっているという点で異なります。

上記のように「大法人」と「大規模法人」の定義が異なるという点に加え、「中小企業者等」の場合は直接保有関係のみで判断され、間接保有関係は考慮する必要がないという点が大きく異なります(100%か1/2あるいは2/3という率も異なりますが)。

P社(資本金10億円)→S1社(P社の100%子会社資本金8000万円)→S2社(S1社の100%子会社資本金1000万円)

というような場合、S2社は中小法人等にが該当しませんが、直接の親会社の資本金は8000万円なので、中小企業者等には該当するということになります。

また、中小企業者等に該当するかどうかの判定時期は、優遇制度によって異なるという点にも注意が必要です。例えば、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入では対象資産の取得日及び事業供用日で判断することとされている一方で、試験研究費の特別控除の特例では事業年度終了の時で判定することとされています。

4.所得基準の導入(平成29年度税制改正)

平成29年度税制改正によって、平成31年4月1日以後に開始する事業年度から従来の資本金基準に加えて所得基準による判定も必要となります。

具体的には、過去3年の平均所得金額が15億円を超える場合には、租税特別措置法に規定されている一部の優遇措置について適用が受けられなくなります。

すべてではなく「一部」というところがややこしいところですが、例えば年800万円以下の交際費等を全額損金算入可能とする制度については資本金基準のみで判定されるため従来どおりですが、年800万円以下の所得について15%の軽減税率を適用できるという制度については所得基準の要件も満たす必要があります。

さらに面倒なのは、軽減税率については所得基準によって15%の軽減税率を適用できなかった場合であっても、19%の軽減税率(法法66②)の適用の可否は資本金基準のみで判定されることとされていますので、こちらの適用は受けられるというケースもあります。

平均所得の計算においては、所得金額がマイナスの年度はゼロとして計算する(その反面、翌年度以降に欠損を繰越控除している場合、その年度の所得は繰越控除後の所得となる)、判定する事業年度開始の日において設立の日の翌日以後3年を経過していない場合の平均所得金額はゼロとするという点に注意が必要です。

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