18年有価証券報告書から適用される開示内容の改正点
実際に使用するのは数ヶ月先ですが、2018年1月26日に交付された「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(平成30年内閣府令第3号)の内容についてポイントを確認します。
今回の改正は、金融審議会のディスクロージャーWG報告の提言を踏まえ、企業と投資家との建設的な対話を促すという観点から、「開示内容の共通化・合理化」と「非財務情報の開示充実」から行われたものとされています。
具体的には、以下の点について改正がなされており、2018年3月31日以後終了事業年度から適用開始となっています。
1.有報と事業報告における大株主の状況の記載の共通化
現状においては、有報と事業報告の大株主の状況において、自己株式の取扱いがことなっています。すなわち、有報では、流通市場への情報提供の観点から自己株式を控除せずに、所有株式数の割合を計算するのに対して、事業報告では「自己株式を除く発行済株式総数に対する株式の保有割合の高い上位10名の株主について、その氏名又は名称、持株数、株式の保有割合を記載すること」が求められています。
したがって、自己株式が存在する場合、両者に記載する割合は異なることとなり、しかも微妙に異なるだけということが多くありました。
今回の改正によって、有報においても事業報告と同様に自己株式を控除して株式所有割合を算定することとなり、有報が事業報告に寄り添う形の改正となりました。
2.新株予約権の記載の合理化
「ライツプランの内容」は該当する会社はあまり多くないのではないかと思いますが、有報における「新株予約権等の状況」と「ストックオプション制度の内容」の項目の記載が重複するとの指摘を踏まえて、「ライツプランの内容」も含め「新株予約権等の状況」に統合されることとなりました。
現状においては、ストックオプション制度の内容の部分に「新株予約権等の状況」に記載している旨を記載している事例もよく見かけますが、18年3月期の有報からはこのような無駄な記載は不要となります。
また、ストックオプションについては、日本基準の財務諸表注記で記載されている場合には、その記載を参照することも可能となります。さらに、現行様式の表が廃止され、過去発行分を一覧表形式で記載することも可能となります。
最後に、現状においては、新株予約権等に関する事項の記載の基準となる時点が、事業年度末と有報提出日の前月末の二つとされていますが、事業年度末から変更がない場合は、その旨を記載して、提出日の前月末の記載が省略できるようになりました。
3.大株主の状況等の記載時点の見直し
株主総会開催日程の柔軟化を目的として、有報における「大株主の状況」等の記載時点が、従来の事業年度末から、原則として議決権行使基準日に変更されます。
3月決算会社で5月末基準日、8月総会開催というようなことであれば、5月末時点が記載基準日となることになります。株主名簿を締めるにも費用がかかるので、株主総会の開催時期を柔軟にしたいのであれば当然の改正といえるのではないでしょうか。
4.非財務情報の開示の充実
従来の「業績等の概要」と「生産、受注及び販売の状況」が「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に統合されます。
これだけなら、なんとなく似ているものが一つにまとまってよかったで終わりですが、以下の2点についての記載が求められることとなりました。
①事業全体及びセグメント別の経営成績等に重要な影響を与えた要因について経営者の視点による認識及び分析
②経営者が経営方針・経営戦略等の中長期的な目標に照らして経営成績等をどのように分析・評価しているか
投資家には叱られそうですが、実務担当者からすれば、面倒な記載が増えたなというのが本音です(本来「経営者の視点」とか「経営者が」なので、実務担当者が苦しむべきこうもくではないはずではありますが・・・)。