介護人材1万人受け入れというけれど、社会保険も気になる
2018年7月25日の日経新聞に「介護人材1万人受け入れベトナムと合意」という記事が掲載されていました。
政府はベトナム政府と同国からの介護人材の受け入れ拡大で合意した。政府は1年以内に3000人、2020年夏までに1万人の数値目標を設け、ベトナム側もこれに協力する。期限と受け入れ数を掲げ、環境整備を急ぐ。介護分野の人手不足は深刻で、今回の数値目標方式をインドネシアなど他国にも広げ、介護人材を確保する。
(2018年7月25日 日経新聞より一部抜粋)
未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)での表現を借用すると、今後日本は高齢者の高齢化が進み、介護が必要となる高齢者も増加することが見込まれるので、「経済産業省によると15年に日本の介護人材は4万人足りなかった。外国から1万人来ても3万人超足りない。35年には人材不足は79万人に達するという。」というのも違和感はありません。
テクノロジーの進歩によって介護の負担が軽減される可能性もあるものの、それを考慮しても圧倒的に人材が不足するのであれば、早めに海外から人材を受け入れようと努力するのは評価できます。ただし、今後15年のベトナムなど新興国の経済発展がすすむことを考慮すると、賃金水準などから35年に介護人材として確保できるのかは疑問です。
いずれにしても今後外国人労働者がさらに増加することが見込まれ、母国に在住する外国人労働者の家族を健康保険の扶養に入れるということも増加することが見込まれます。
日本の健康保険は海外での治療は対象外と勘違いされている方がたまにいますが、海外での治療も日本の健康保険の対象となります。ただし、国内での治療のように健康保健証と出せば3割負担で済むというような訳にはいかず、一度全額を負担して、後日健康保険に請求するということになる上、日本で治療した場合の費用をベースにした金額が支給されることとなっています。海外での治療費は日本に比べて高額であるケースも多く、そのため健康保険の適用を受けても自己負担金額が大きくなることがあるので、海外旅行時には別途保険への加入が必要と言われたりしています。
裏を返すと、諸外国に比べて日本国内で治療を受けると安くすむという可能性があり、母国の家族を扶養に入れて日本で治療を受けるということも増加することが予想されます。
海外在住の家族で健康保険の扶養にすることができるのは、被保険者の直系尊属、配偶者(戸籍上の婚姻届がなくとも、事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、弟妹、兄姉で、主として被保険者に生計を維持されている人とされています。
「主として被保険者に生計を維持されている」とは、具体的には、年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は年間収入が180万円未満)かつ、被扶養者の収入が、被保険者からの仕送り額未満でなければならないとされています。
手続き的には「被扶養者 現況申立書」を作成し、上記の要件を確認できる確認書類と合わせて日本年金機構または健康保険組合に提出することとなります。確認書類としては以下のようなものが必要となります。
- 被保険者との続柄が確認できる公的証明書またはそれに準ずる書類
- 収入がある場合は、公的機関または勤務先などから発行された収入証明書
- 収入がない場合は、それを証明する公的証明書またはそれに準ずる書類
- 被扶養者に対する被保険者からの送金事実と仕送り額を確認するため「金融機関発行の振込依頼書または振込先の通帳の写し」
とはいえ、国によっては無収入の場合の証明書の決まったフォームが未整備であったり、物価水準の違いから送金額から扶養の判定が難しかったりしますので、状況に応じた対応が求められることも多々あると思います。
外国人労働者の増加に伴う海外在住の被扶養者の増加が、将来の社会保障費にどの程度影響を与えるのか気になるところです。