5年ぶりに実施された人事諸制度の調査で変わったのは?(労政時報調査)
労政時報3956号に「人事労務諸制度の実施状況【前編】」が掲載されていました。同誌が5年ぶりに行った調査結果で、上場企業3830社と資本金5億円以上または従業員5億円以上または従業員500人以上3909社の合計7739社を対象に調査したもので、回答数は440社とのことです。
18分野192項目で実施された調査結果のうち、今回の記事では10分野の調査結果が掲載されていましたが、この中からいくつか目についたところを取り上げていきます。
1.賃金関連
賃金関連の実施率で最も高い数値を示したものは確定拠出年金で48.9%となっています。かならずしも確定拠出年金のみというわけではないと思いますが、感覚的にもこんなものかなという気はします。なお、退職金関連という意味ではポイント制退職金制度の実施割合は39.8%とこちらも高い数値となっています。
いつも意外に高いなと感じるのが完全月給制で、実施率は31.8%となっています。2013年の調査でも31.3%で大きな変動はありませんが、完全月給制は「欠勤、遅刻、早退してもその分は控除せず、定められた月給額を支給する制度」のことで、欠勤しても給料が控除されない会社が3割以上もあるというのはすごいなと感じます。
次に、定額残業手当の導入割合は12.5%となっており、割合的にはそんなものかなという感じがします。興味深いのはその導入割合の推移です。定額残業手当の導入割合は、2007年6.6%、2010年7.7%、2013年10.7%、2018年12.5%と増加してきています。増加したといっても12.5%ではありますが、どちらかといえば減っていると思っていたので認識を改めました。
また、年俸制の実施率は22.7%となっており、こちらはもっと高いイメージがあったので全体の実施率としては意外でしたが、年俸制を実施している300人未満の会社では全従業員に対して年俸制を実施しているという会社の割合が41.2%となっており、本当かなという感じはしました。
2.労働時間・休暇関連
働き方改革で注目されている部分ですが、まず目につくのは長時間労働削減策で実施割合は48.4%となっています。2007年、10年、13年の調査では7割以上の実施割合とされていたことからすると大幅な減少となっています。長時間労働についてはこれだけ騒がれているので、削減策を辞めたというよりは、この5年で長時間労働が随分是正されたということなのではないかと推測されます。
在宅勤務については、5年前の調査では7.9%でしたが、今回の調査では11.8%と増加傾向を示していますが、全体的にはまだまだというところだと思います。
半日単位の年休給取得については71.8%が実施していますが、思ったよりも低いのが時間単位年休で、こちらは前回調査よりも約6ポイント増加しているものの16.1%にとどまっています。
また、失効年休の積立・保存は44.1%と5年前の調査よりやや減少しているものの、約半分の会社で導入されているようです。民法の改正との関係で、今後年休の繰越年数も変わることとなれば、このあたりの制度も見直されるケースが増えるのではないかと思われます。
ちなみに最近忘れ去れた感のあるプレミアムフライデーですが、プレミアムフライデーの早帰りの実施率は7.3%とのことです。
3.雇用関連
この分野では、リファラル採用を実施している会社の割合が24.8%と4社に1社となっています。前回調査項目ではなかったため増加傾向にあるのかも確かではありませんが、リファラル採用については近年取り上げられる記事なども多くなっていますので、増加傾向にあるものと推測されます。
また、同様に前回の調査項目ではありませんでしたが、今回の調査によれば、新卒者の通年採用の実施率は30.7%とされています。売り手市場と言われる中で、企業側の採用も変化してきているということがうかがわれます。