上場間もない会社が臨時株主総会で監査等委員会設置会社に移行する総会議案を確認
少し前に”上場会社が臨時株主総会を開いてまで監査等委員会設置会社に移行したい理由はなんだろう?“で、今年6月に東証マザーズに上場したログリー(株)が9月20日に「臨時株主総会招集のための基準日設定に関するお知らせ」という適時開示を行った旨を取り上げました。
上場間もない会社が臨時株主総会を開いてまで監査等委員会設置会社に移行しようとするのは何故なのかが気になっていましたが、10月18日に同社より「臨時株主総会開催日及び付議議案の決定に関するお知らせ 」が適時開示され、議案が明らかとなりました。
適時開示で明らかとされた議案は以下の5議案です。
第1号議案 定款一部変更の件
第2号議案 取締役(監査等委員である取締役を除く。)4名選任の件
第3号議案 監査等委員である取締役3名選任の件
第4号議案 取締役(監査等委員である取締役を除く。)の報酬等の額設定の件
第5号議案 監査等委員である取締役の報酬等の額設定の件
定款変更の内容については別途「監査等委員会設置会社への移行に伴う定款の一部変更に関するお知らせ」で新旧対照表が示されていますが、特に特殊なものはないようです。
定款変更理由については、以下のように述べられています。
取締役会の監査・監督機能を強化するとともに、業務執行決定権限の取締役への委任による意思決定および業務執行の迅速化・効率化を図ることにより、コーポレート・ガバナンスの一層の充実を目指すため、きたる平成 30 年 12 月1日をもって監査等委員会設置会社に移行いたしたく存じます。
これに伴い、監査等委員会設置会社への移行に必要な監査等委員会および監査等委員に関する規定の新設ならびに監査役および監査役会に関する規定の削除等を行うものであります。
監査等委員会設置会社の場合、取締役会の決議によって重要な業務執行(会社法399条の13第5項各号に掲げる事項を除く)の決定の全部又は一部を取締役に委任することができる旨を定款で定めることができるとされており(会社法399条の13第6項)、同社の定款変更案にもこの定めが織り込まれていますが、特にめずらしいことではありません。
第2号議案および3号議案で選任が予定されている取締役の人数は、現状の取締役(取締役は9月に1名辞任後の人数)・監査役の人数と一致しており、全体的な構成人数に変化はなく、人数を絞って効率化を図るということではないようです。
第4号・5号議案についても、報酬額については現状の取締役・監査役の年間報酬額の枠と同額とする旨の議案とされていますので、報酬枠を上げたかったというでもないようです。
様々なコストをかけて、本当に監査等委員会設置会社に移行したいだけで臨時株主総会を開くものだろうかいう気はするものの、上記の内容からするとそれ以外の目的はなさそうです。
ただし、第2号及び3号議案で選任が予定されている取締役が、現状の取締役および監査役を候補者とするとは記載されていないので、役員の入れ替えが目的であるという可能性は残っていますので、これは招集通知で確認してみようと思います。
前回、上場会社で臨時株主総会を開いて監査等委員会設置会社に移行した事例が見当たらないと書きましたが、2016年1月に(株)システム・テクノロジー・アイ(現:アイスタディ(株))が臨時株主総会を開いて監査等委員会設置会社に移行しているという事例がありました。同社は当時、マザーズに上場して10年以上経過しており、経常損失が計上されている年度が多かったという状況で、機関設計変更により監査等委員以外の取締役2名、監査等委員である取締役3名の計5名という構成に変更しており、これなら臨時株主総会を開いてでも役員数を減らしたかったのだろうということは理解できます。
他にも該当する事例はあるかもしれませんが、上場会社が臨時株主総会を開いてまで機関設計を変更するというのはめずらしいという点に変わりはないと考えられます。
臨時株主総会で、来年の総会まで待てなかった理由を聞かれたらなんと答えるのだろう・・・