企業等に所属する会計士の倫理規則等が改正されるそうです
昨年12月26日に日本公認会計士協会から「倫理規則」、「違法行為への対応に関する指針」及び「職業倫理に関する解釈指針」の改正に関する公開草案が公表されました。
会計士の登録を継続する上で、職業倫理を2単位獲得する必要があるので、毎年2単位分は指定記事等を読んだりしているものの、業務に直結しそうなものが多くある中で、必要以上に職業倫理について学ぼうという気にはならないというのが正直なところです。そのため「倫理規則」やら「職業倫理に関する解釈指針」をきちんと読み込もうという気にもなりませんが、今回の改正は「企業等所属の会員に対する規定の改正」という点が気になったのでざっと内容を確認してみました。
全体的な印象としては、かなり多くの記載が追加されていました。IESBAが、2016 年7月改正した倫理規程において、違法行為への対応に関する規定が新設されており、当該規定が、監査人だけではなく、企業等所属の職業会計士を含む全ての職業会計士を対象としているものであったため、日本でも同様に改正が行われたということのようです。
確かに企業等に所属する会計士が粉飾に関与していたというようなことがあると公認会計士に対するイメージが悪くなることが予想されるため、このような改正が必要となるのも理解できます。会計士という肩書きを利用して一般事業会社にサービスを提供している場合であればまだしも、一般事業会社に所属すると、会計士として登録する意味がないといって登録を抹消する人も多く見受けられますので、実際問題としてはそれほど意味を持たない改正とも考えられます。
改正で興味深いのは「違法行為への対応に関する指針」において、組織の上級職にある会計士と,上級職以外の会計士に区分して規定が置かれていることです。
ちなみに、「上級の職にある企業等所属の会員」とは、「取締役、監査役等及び人的、財務的、技術的、物的及び無形の経営資源の取得及び配分並びに経営資源に対する支配に関して重要な影響力を行使し決定できる職位にある会員」とされ、「権限等に応じて,外部監査人への報告の必要性や,追加的な対応を行うことの必要性を判断することが求められる」(経営財務3391号)とされてています。
「違法行為は、故意若しくは過失又は作為若しくは不作為を問わず、所属する組織、その経営者、監査役等、従業員等又は所属する組織の指示の下で働く委託先業者等のその他の者によって行われる、法令違反となる行為」とされており、会計に限定されないため、監査役に就任している会計士は気になるところですが、「会員には、専門的な知識を有し、職業的専門家としての判断及び専門的能力を行使することが求められているが、所属する組織の中でその役割を果たすために要求される水準以上の法令に関する理解を有することまでは求められていない」とされていますので、従来と大きく何かが異なるということはないと考えられます。
また、「上級職以外の会計士は、違法行為の内容・状況等を理解することに努め,違法行為の疑いを持った場合等には、組織の方針および手続(倫理規程や内部通報制度等)に従って対処し、適切な場合には上司に報告,文書化を行う」(経営財務3391号)とされています。
倫理関連規定の改定も重要でしょうが、上級職以外の会計士が会計士登録し続けるメリットがあまりないという現実に目を向けた方が、社会における会計士のプレゼンスが高まるのではないかという気はします。