会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案が決定(その2)
会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案が決定(その1)の続きです。
今回は以下の主な内容についてです。
第1部 株主総会に関する規律の見直し
第2 株主提案権
2.株主提案権
①株主が提案することができる議案の数の制限
これは、1人の株主が不当な目的で多数の議案を提案するというような事例が生じていることを踏まえたもので、要綱案では株主提案の議案数を10に制限するとされています。
なお、議案数のカウント方法について、要綱案では以下のようになっています。
- 役員等(取締役、会計参与、監査役または会計監査人)の選任に関する議案:当該議案の数にかかわらず,これを一の議案とみなす。
- 役員等の解任に関する議案:当該議案の数にかかわらず,これを一の議案とみなす。
- 会計監査人を再任しないことに関する議案:当該議案の数にかかわらず,これを一の議案とみなす。
- 定款の変更に関する二以上の議案:当該二以上の議案について異なる議決がされたとすれば当該議決の内容が相互に矛盾する可能性がある場合には,これらを一の議案とみなす。
会計監査人を再任しないことに関する議案が複数になるというのがひっかかりましたが、個人事務所等の共同監査で会計監査人が複数いるケースで生じる可能性があると考えられます。
また、10を超えて議案を提案してきた場合はどうなるのかですが、この場合は、どの議案が10を超える議案なのかを取締役が定めるものとするとされています。ただし、議案を提出した株主が議案の優先順位を定めている場合には、その優先順位に従うとされています。
②目的等による議案の制限
現行法においても、会社法施行規則93条1項3号括弧書きにおいて「当該提案の理由が明らかに虚偽である場合又は専ら人の名誉を侵害し、若しくは侮辱する目的によるものと認められる場合」には、「提案の理由」を株主総会書類に記載しないことができるとされています。
ただし、株主提案自体は、当該議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主の議決権の十分の一以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合に制限されることとなっています(会社法304条ただし書、会社法305条4項)。
要綱案では新たに以下のような目的による株主提案が制限されることとなっています。
- 株主が,専ら人の名誉を侵害し,人を侮辱し,若しくは困惑させる場合
- 自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的の場合
- 株主総会の適切な運営が著しく妨げられ,株主の共同の利益が害されるおそれがあると認められる場合