新たな連結納税制度は「個別申告方式}?
T&A master No.777に「見えて来た新たな連結納税制度」という記事が掲載されていました。
この記事によると、昨年11月に開催された「連結納税制度に関する専門家会合」の初回会合において「個別申告方式」の採用が示唆されていたが、2月14日に開催された第2回会合において、財務省から個別申告方式の具体的な考え方が示されたとのことです。
「個別申告方式」とは何かですが、文字通り連結納税に加入する各社が申告を行う仕組みのようです。これが実現すると、「連結納税グループ内の法人の一部で修正申告や更生が行われた場合、その影響が連結納税グループ内の全法人に及ぶという問題」の解消が図られることになるようです。
現行の連結納税制度では、上記のような問題が実務上負担が重いという話を耳にしますが、経団連が実施したアンケート結果においても、連結納税制度を採用している法人が回答したデメリットとしては、事務負担の増加に関するものが相次いだとのことです(「申告の事務負担が増えた」は回答のあった54社中51社がデメリットとしてあげています)。
事務負担の軽減が図られるのであれば、連結納税を採用しようと考える会社は増加することが見込まれますが、各法人間での所得の通算はどうなるのかが当然気になります。
この点については、連結納税グループ内で欠損が生じている法人の欠損金を合計し、欠損金を課税所得が生じている法人の課税所得の割合で按分して配分するという考えが示されているとのことです。
P社の課税所得500、S1社の課税所得100、S2社は欠損▲120であったとすると、S2社の欠損▲120をP社とS1社の課税所得の割合によって、P社に▲100、S1社に▲20を配分するということになるようです。
この結果、P社の課税所得は500-100=400、S1社の課税所得は100-20=80、S2社は所得ゼロとなります。
では、一部の法人で修正や更正が生じた場合にどのように処理されるのかですが、この点については”「一度使用した欠損金」はその後の税務調査等で所得の増減があったとしても考慮しないという方法で、一法人の所得の変動の影響が連結納税グループの全法人に及ばないようにする」とされています。
どういうことか数値例を示すと以下の様な取扱いとなるようです。
上記の数値例で、S2社の税務調査の結果、S2社で200の増額更正が生じ、実際の所得は▲120ではなく80となったとします。この場合、当初の▲120はP社およびS1社で使用済みなので、S2社の課税所得を80ではなく200としてS2社から追徴することになるとされています。
逆にS2社で80の減額更正が生じ、実際は▲200であったという場合にも、▲120分についてはすでにP社およびS1社で使用済みのため残りの▲80のみを翌期に繰り越すということになるそうです。
これであれば事務負担は確かに軽減されそうです。さらに「個別申告方式が採用された場合には、自ずと連結納税制度開始あるいは連結納税グループ加入時の時価評価や欠損金持込制限も不要ないしは大幅な緩和が必要という指摘も出て来ることになろう」と述べられています。
一方で、研究開発費税制や外国税額控除など連結グループ全体で計算するからこそ税メリットがある項目をどのように取り扱うのかについてどうなるのかについては、現時点では不明のようです。研究開発やグローバル化の進展をを阻害するような改正にはならないのではないかという気はしていますが、「来年度(2020年度)税制改正で連結納税制度が見直されることはもはや決定的」とのことですので動向には注意が必要です。