2年契約なら2年分の申告書作成報酬が8%?-消費税経過措置
税務通信3548号の税務の動向に「消費税引上げの経過措置 3月までの契約で税理士報酬も対象」という記事が掲載されていました。
この記事では、税理士が顧客から受け取る申告書作成報酬の性質は、”一般的には、「委任その他の請負に類する契」で目的物(申告書)の引渡しが行われるものなどとして、「工事の請負等の税率等に関する経過措置」の対象となるようだ(税制抜本改革法附則5③、16①、26年改正消令附則4⑤)。そのため、指定日前日の3月31日までに結んだ契約に基づき、10月の税率引き上げ後に申告書の引渡しがあった場合、その申告書作成報酬は旧税率8%の適用となろう”と述べられています。
そして、「契約が2年契約の場合は、その決算2期分に係る申告書作成報酬が対象となるようだ」とされています。相手が個人や免税事業者の個人事業主などでなければ、変に8%の契約が残るのはかえって煩雑なだけという可能性はありますが、この理屈で言えば5年契約なら5期分の申告書作成報酬に8%が適用されるということなります。
工事の請負等の税率等に関する経過措置は、「仕事の目的物の引渡しが一括して行われること」が要件とされており、上記のようなケースでは複数回にわたり申告書の引渡しが行われるので、要件を満たさないのではという点については、以下のように述べられています。
本紙取材によれば、一の契約で2期分の申告書の作成が含まれていても、その2期分に係る申告書作成報酬が旧税率8%の適用対象となるようだ。なお、契約当初に報酬額を決めておかないと経過措置の対象にならない。
昨年10月に国税庁が公表した「平成 31 年(2019 年)10 月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A【基本的な考え方編】」のQ&A21においては、
工事の請負等の税率等に関する経過措置における「工事の請負に係る契約に類する契約」については、「仕事の目的物の引渡しが一括して行われること」が要件とされていますが、完成した部分をその都度引き渡す場合は、この要件を満たさないことになるのですか。また、目的物の引渡しを要しない請負等の契約の場合には、この要件を満たさないことになるのですか。
という問いに対して、以下の様な場合には請負等の契約に係る目的物の引渡しが部分的に行われるとしても要件を満たすこととなるとされています。
① 一の契約により同種の建設工事等を多量に請け負ったような場合で、その引渡量に応じて工事代金等を収入する旨の特約又は慣習がある場合
② 一の建設工事等であっても、その建設工事等の一部が完成し、その完成した部分を引き渡した都度その割合に応じて工事代金等を収入する旨の特約又は慣習がある場合
税務通信の記事では何故という部分については特に述べられていませんでしたが、上記のQ&Aの要件と比較すると、単に複数年契約であるだけで複数年分の申告書作成に8%が適用されるというのは、妙な感じがします。
これを目的に今から複数年契約を考えるということはあまり考えられませんが、顧問報酬と申告書作成報酬が区分されていないような場合には、そもそも経過措置の対象とはならないとのことですので、こちらは注意した方がよいと思われます。