清流監査法人に業務改善命令
3か月ほど前に”清流監査法人に対し行政処分を勧告”という記事で、公認会計士・監査審査会が、2019年7月5日に「清流監査法人に対する検査結果に基づく勧告について」を公表し、金融庁長官に対し、行政処分その他の措置を講ずるよう勧告した旨を取り上げました。
これを受け、金融庁は2019年10月25日に清流監査法人に対して、業務改善命令(業務管理体制の改善)とする処分を公表しました。
処分理由の詳細に興味がある方は金融庁のサイトで確認することをお勧めしますが、ポイントだけ要約すると以下のとおりです。
業務管理態勢については、「総括代表社員においては、法人トップとして組織的に監査の品質を確保するという意識に欠けており、当監査法人の監査業務の現状を踏まえた実効的な品質管理のシステムを構築するためにリーダーシップを発揮していない。また、総括代表社員以外の社員においては、当監査法人の業務運営、品質管理のシステムの整備及び運用を総括代表社員に委ね、これに関与するという意識に乏しく、社員としての職責を十分に果たしていない。」とされています。
品質管理体制については、以前の品質管理レビューで限定事項とされている点などについて、「いずれの取組も不十分であることから、今回審査会検査で検証した個別監査業務の全てにおいて、これまでの品質管理レビュー等での指摘事項と同様の不備が繰り返されている」とされ、監査実施者の教育・訓練も不十分で「会計基準及び監査の基準の理解不足に起因した不備が多数生じており、当監査法人の教育・訓練は実効性のあるものとなっていない」とされています。監査業務に係る審査については、「審査担当責任者は、審査の職責を果たしておらず、当監査法人の審査態勢は十分に機能していない」とされ、その他の事項も合わせて総括として「当監査法人の品質管理態勢は、前回審査会検査及び品質管理レビューでの指摘事項に対する改善状況、監査契約の新規の締結及び更新並びに監査業務に係る審査に重要な不備が認められるほか、広範に不備が認められており、著しく不十分である」と断じられています。
個別監査業務については、「検証した個別監査業務において、重要な不備を含めて広範かつ多数の不備が認められており、当監査法人の個別監査業務の実施は著しく不十分なものとなっている。」とされています。
これだけ書かれれば業務改善命令が出るのも不思議ではありません。
業務改善命令の主な内容は以下のとおりです。
(1) 総括代表社員は、組織的に監査の品質を確保する必要性を十分に認識し、社員の職責の明確化、社員会の機能発揮、社員及び職員の経験に依存した業務運営の改善など、実効性のある品質管理のシステムの構築に向け、当監査法人の業務管理態勢を整備すること。
(2) 総括代表社員は、審査会の検査及び日本公認会計士協会の品質管理レビューにおいて指摘された不備の原因を十分に分析したうえで改善策を策定及び実施し、改善状況の適切な検証ができる態勢を整備するとともに、監査契約の新規の締結における十分かつ適切なリスク評価、監査実施者に対する実効性のある教育・訓練、審査担当責任者による批判的かつ適切な審査、実効性のある日常的監視及び定期的な検証を実施できる態勢を整備するなど、当監査法人の品質管理態勢の整備に責任を持って取り組むこと。
(3) 現行の監査の基準に準拠した監査手続を実施するための態勢を強化すること(固定資産の減損会計における兆候判定、株式移転の会計処理、関連当事者取引に関する検討など、審査会の検査において指摘された事項の改善を含む。)。