風評被害の賠償金は非課税所得にならず?
T&A master No.821に”風評被害での賠償金は非課税にならず”という記事が掲載されていました。
損害賠償でも非課税所得にならなないということで気になったので内容を確認すると、以下の様な事案でした。
肉用牛の販売を行う請求人が原子力発電所の事故による風評被害等により電力会社から受領した損害賠償金について、原処分庁はその支払が合意された年分の事業所得に係る総収入額に算入した一方、請求人は①当該損害賠償金は非課税所得に該当する、②仮に非課税所得に該当しないとしても、その対象となる肉用牛を売却した年分の総収入金額とすべきであるなどとして、原処分の取消を求めた。
結論としては、タイトルの通り請求人の主張は認められず、非課税所得には該当しないこととされたわけですが、この事案における賠償金は、「風評被害による肉用牛の売却価額と売却に係る価額との差額、出荷制限により生じた損失及び消費税等相当額などを損害として行われた賠償金の請求に対して、電力会社から支払われたものである」とされ、「賠償金は原発事故という突発的な事故により、事業に係る棚卸資産につき損失を受けたことにより取得する損害賠償であって、事業に係る収入金額に代わる性質を有するものと認められるとし、非課税所得に該当しないとの判断を示した」とされています。
基本的に本来得られたであろう収入と実際の収入との差額を請求しているにすぎないので、非課税所得には該当しないとするのが妥当ということのようですが、「出荷制限により生じた損失」は、実損の填補という意味合いが強いのではないかと思いますので、この分が収入金額に含まれるというのはやや厳しいように思います。ただし、それぞれの金額がどの程度であったのかは不明なので、それほど影響はないのかもしれません。
ちなみに、請求人の②の主張についても、「賠償金の収入の原因たる権利は、受託者の合意により、各合意日にそれぞれ確定的に発生したものと認めるのが相当」として斥けられたとのことです。
税務でも会計でも名目にかかわらず実質で判断しなければならないということは珍しいことではありませんが、損害賠償金であっても、どのように算定されているかによっては取扱いが異なる可能性があるという事案として記憶にとどめておくようにしたいと思います。