閉じる
閉じる
閉じる
  1. 18監査事務所が会計士資格を誤表記で有報訂正が必要らしい
  2. 内部統制新基準が2025年3月期より適用に(公開草案)
  3. デューデリジェンス(DD)費用の税務上の取り扱い
  4. テレワークの交通費、所得税の非課税限度額適用の有無は本来の勤務地で判断…
  5. プライム市場上場会社、88.1%が英文招集通知を提供
  6. タクシー、インボイス対応か否かは表示灯での表示を検討?
  7. 副業の事業所得該当判断の金額基準はパブコメ多数で見直し
  8. 総会資料の電子提供制度、発送物の主流はアクセス通知+議案等となりそう
  9. 押印後データ交付の場合、作成データのみの保存は不可(伝帳法)
  10. 四半期開示の議論再開(第1回DWG)
閉じる

出る杭はもっと出ろ!

訂正報告書の虚偽記載に対し課徴金納付命令勧告

証券等取引等監視委員会が2020年8月7日に2020(令和2)年版の「開示検査事例集」を公表したという記事の中で、2019事務年度において課徴金納付命令勧告を行ったとされる事例の一つに「訂正報告書に関する虚偽記載」というものがありました。

この事案は「開示検査事例集」の「【事例4】子会社による売上の過大計上等(東証一部、卸売業)」で掲載されています。

この事例の特色として以下の様に記載されています。

子会社における不動産販売について、売上げを過大に計上し、かつ、不採算子会社等を連結範囲から除外し、過大な当期純利益等を計上した事案です。
また、本件は、虚偽記載等が判明した後に有価証券報告書の訂正報告書を2度提出していますが、最初に提出した有価証券報告書の訂正報告書のうち、一部の訂正報告書の訂正内容にも虚偽記載が認められため、課徴金納付命令勧告の対象としました。

虚偽記載の内容としては以下の二つとされています。
①不適正な不動産販売による売上の過大計上
②不採算子会社等の連結範囲からの除外

要約すると①は買戻が前提となっている不動産売却を実現したものとしてPLに計上していたというもので、②は不採算の子会社および当時の代取が実質的に所有し支配していた会社についても連結の範囲に含めていなかったというものです。

不正の生じた背景・原因としては、
①創業家の強い影響力が残っていたこと
②コーポレート・ガバナンス及び内部統制が十分に機能していなかったこと
③会計に関する知識が欠如していたこと
が挙げられています。

この会社は最初の訂正報告書を2019年9月11日に提出し、再訂正報告書を2019年11月14日に提出しています。この2か月間の間に訂正された項目にどのようなものがあるのだろうかと同社の訂正報告書(2回目)を確認してみたところ、以下の項目が列挙されていました。

 

このたびの訂正の内容は、①連結の範囲の見直し、②平成27年3月期に係る不動産の販売代理手数料の一部取消し、③平成27年3月期に係る投資有価証券の売却に関する計上等の一部取消し、④平成29年3月期から平成30年3月期に係る訴訟引当金の計上時期の見直し、⑤平成30年3月期に係る販売用不動産の売上高の一部取消し、⑥令和2年3月期第1四半期に係る投資有価証券の売却の一部実現の訂正等となります。これらの訂正を実施し、関東財務局に有価証券報告書の訂正報告書および四半期報告書の訂正報告書を提出いたします。
 なお、このたび再点検を行った結果、必要と認識した事項に関する訂正はすべて反映させたものと考えております。また、平成27年3月期に取消した不動産の販売代理手数料および投資有価証券の売却につきましては、令和2年3月期第2四半期までにすべて実現しております。

 
訂正報告書の提出に至る経緯としては、再訂正報告書の冒頭に以下の様に記載されています。

令和元年5月16日に金融商品取引法違反(平成27年3月期の有価証券報告書の虚偽記載)の容疑(平成27年3月期に係る不動産物件の取引に関する架空売上計上の疑い。以下「本件嫌疑」といいます。)で、証券取引等監視委員会および横浜地方検察庁による調査等を受けた事実を真摯に受け止め、本件嫌疑について事実関係の調査、会計処理の適切性の検証、ならびに、問題が認められた場合には発生原因の分析および再発防止策の提言が必要であると判断し、当社と利害関係を有しない外部専門家で構成される第三者委員会を設置して調査を進め、同年7月24日付で同委員会による調査報告書を受領いたしました。

ちなみに初回の訂正報告書の訂正理由は以下のとおり記載されています。

 

2019年8月1日に提出いたしました第70期(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)有価証券報告書について、記載事項の一部に誤りがあったため、記載事項の一部を訂正いたします。
 また、金融商品取引法第24条第6項及び企業内容等の開示に関する内閣府令第17条第1項により、会社法第438条第1項に掲げる株主総会に報告しようとするもの又は承認を受けたものとして会社法上の計算書類等を有価証券報告書に添付することとされておりますが、当社は、2015年3月期に係る売上高の一部の取り消し等の訂正を実施するとともに、連結の範囲に関する重要性の判断を見直すことにより、過年度決算の訂正を行うこととしたため、計算書類等は2019年9月27日開催の臨時株主総会における報告事項といたしました。
 したがって、第70期(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)の有価証券報告書に計算書類等を添付することができなかったことから、改めて2019年9月27日開催の臨時株主総会における招集通知を有価証券報告書の添付書類といたします。

同社は2019年7月19日に臨時株主総会招集のための基準日を8月9日とする旨を適時開示しています。この時点では8月9日から3か月以内に開催する臨時株主総会で議決権を行使することができる株主を確定するためとのみ記載されており、それ以上の臨時株主総会の開催時期の目処については特に記載されていません。

その後、2019年8月23日に2019年9月27日に臨時株主総会を開催する旨を公表しています。この臨時株主総会後に初回の訂正報告書を提出したわけですが、この間の経緯については、株式会社東京証券取引所より当社の内部管理体制等について不備があり、改善の必要性が高いと認められたことにより、”2019年9月20日付で「特設注意市場銘柄」の指定を受けた”ことを”深く反省し、2019年8月1日付で過年度の訂正を行った理由等にとどまることなく、連結の範囲について、資本関係がない実質支配会社も含め、すべてを連結する方針としたうえ、第三者である外部の専門家とともにより幅広に再点検等を行った結果、改めて必要と認識した事項につきまして過年度の決算の訂正を行うことといたしました”とされています。

ここまで初回の訂正に織り込むというのが普通のような気がするので、初回訂正と再訂正の間に何かがあったのだろうという気はします。ただ単に、臨時株主総会の開催日を早くしすぎたというだけなのかもしれませんが・・・。

訂正報告書の訂正というのもあり得ない話ではありませんが、このケースのように訂正の訂正であまりにも多くの項目がでてくるとイメージは当然よくありませんし、不正会計により訂正した箇所をさらに再訂正すると課徴金が課せられる可能性もあるという点は覚えておくとよいと思います。

不正会計を行わないというのが重要なのは当然ですが、仮に不正会計が発覚した場合には、膿は一度で出し切るというのが重要だと考えられます。

関連記事

  1. 単体開示の簡素化-早ければ平成26年3月期より

  2. 不正アクセスでクレジットカード番号等の情報が流出した可能性を開示…

  3. 3月決算会社(2021年)の総会前有報提出は27社

  4. 平成27年3月期第1四半期報告書の変更点

  5. 会社法計算書類の経団連ひな形が改正されました

  6. トーマスクック社の破綻とKAM




カテゴリー

最近の記事

ブログ統計情報

  • 12,947,710 アクセス
ページ上部へ戻る