企業が行う不正会計手口トップ10とは?
経営財務3471号の【海外会計トピックス】で公認会計士の飯田信夫氏が米国SECによる企業の不正会計についての報告書から、不正会計の手口トップ10を紹介していました。
なお、SECは、2012年から内部通報制度を設置し、5億ドルを超える報奨金の支払が行われているとのことです。日本人の国民性にはあまりなじまないのかもしれませんが、効果はありそうなので、日本でも同様の制度を導入するというのもありだと個人的には思います。
さて、不正会計の手口トップ10は以下のとおりとのことです。
- 収益計上時期が不適切
- 架空売上
- 押し込み販売(預かり在庫)
- 第三者間取引
- 経営者による不正な見積り
- 費用計上すべきものを資産計上する
- 資産計上以外の方法で費用の不適切な処理
- 見積や予測の不適切な設置
- 非GAAP報告によるミスリード
- 不十分な財務報告に係る内部統制
4番目の「第三者間取引」は「第三者の企業と示し合わせて不適切または不正に取引を行うことで収益計上を行う方法」とされていますので、結果的に上から4つは収益認識にするものということになっています。
最も多いとされる「収益計上時期が不適切」というのは、そのままの内容ですが、SECの財務報告に関する行政手続きの60%が収益計上時期の不適切さであったとされており、圧倒的に多いということのようです。2番目の架空売上は、実態がない取引をもとに売上計上するものであるため、それを埋め合わせる受注が将来なければ破綻することが容易にわかる一方、収益認識計上時期を本来あるべきタイミングからズラすというのは、将来売上として計上されることが確定しているものの計上タイミングのみの問題であると考えられるため、不正会計に利用されやすいということなのだと考えられます。
5番目の「経営者による不正な見積り」と8番目の「見積や予測の不適切な設定」の違いはそれほど明確ではありませんが、「経営者による不正な見積り」の方が決算に直接影響を与えるものというニュアンスのようです。
6番目の「費用処理すべきものを資産計上する」は、期間費用として処理すべきものを資産計上するというもので、7番目の「資産計上以外の方法で費用の不適切な処理」は、「本来計上すべき費用の先送り処理をすることや、期末の在庫金額を過大計上することで売上原価を過少処理して当期純利益を膨らませることなど」とされています。「資産計上以外の方法で費用の不適切な処理」に、在庫の過大計上が含まれているため、「費用処理すべきものを資産計上する」との区別がいまいち明確ではありませんが、「本来計上すべき費用の先送り処理をする」というような計上すべき費用が計上されていないという方が発覚しにくいと考えられるところ、「費用計上すべきものを資産計上する」の方が多いというのはやや意外でした。
これは、「本来計上すべき費用の先送り処理をする」ことにより操作できる金額はある程度限られている一方で、発生している費用を資産化したり、架空の在庫を計上するという方法であれば、かなり大きな金額を操作できるためなのかもしれません。
9番目の「非GAAP報告によるミスリード」については、日本でも有価証券報告書の記載においても財務情報及び記述情報の充実などが求められていることから非GAAP情報の記載が増加していく可能性があることからすれば、今後日本でも問題となることがあると推測されます。
こうしてみると、基本的には外国であっても日本であっても不正会計に利用される手法に大きな差はないといえそうです。