子会社から親会社の配当に対して源泉徴収が不要となる?
税務通信3630号の税務の動向に「検査員 子会社配当の源泉で還付金発生と指摘」という記事が掲載されていました。
会計検査院が2020年11月10日に公表した「令和元年度決算検査報告の概要」に関するもので、会計検査院はこの中で、「完全子法人株式等に係る配当等に源泉徴収を行うことで,
多額の還付金及び還付加算金が発生していると指摘」し、「配当等の源泉徴収制度の在り方を検討することが肝要などとし、引き続き同制度を注視していくとしている」とのことです。
多額の還付金及び還付加算金はどの程度かですが、これについては「検査対象の1,667法人のうち、完全子法人株式等及び関連法人株式等に係る受取配当等に対する源泉所得税額について、所得税額控除を適用したことで還付金が生じていた法人は1,262法人で,その支払われた還付金は8,898億6,092万円」で、「このうち還付加算金が生じていた法人は888法人で、その支払われた還付加算金は3億6,563万円」とのこととです。
還付加算金自体は、国からしてみればそれほど大きな金額ではないものの、「還付金及び還付加算金並びにこれらに係る税務署の還付事務が生ずる」と指摘されています。さらにいえば、源泉徴収する側の法人でも事務手続や源泉税の納付事務作業などが発生していますので、事務コストまで含めて考えると結構な金額となると推測されます。
会計検査院の所見としては、「財務省において、源泉徴収義務者による源泉徴収事務の便宜を考慮した上で、配当等に係る源泉徴収制度の在り方について、引き続き、様々な観点から効率性、有効性等を高める検討を行っていくことが肝要」とされています。
法人サイドとしては、この低金利下において、多少事務処理が増えても還付加算金がもらえるのであれば、その方がありがたいという意見もあるかもしれませんが、行政の無駄を撲滅しようと取り組んでいる大臣もいますので、早々に税制改正に織り込まれても不思議ではないように思います。