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会計監査人の異動の適時開示-評価基準等の内容を示す事例がでてきているそうです

経営財務3500号に会計監査人の交代に関する適時開示についての記事が掲載されていました。

会計監査人の異動に関する適時開示等では、以前は「任期満了」による旨が単に記載されていることが普通でしたが、東証の「会社情報適時開示ハンドブック」の改訂によって実質的な交代理由の開示が求められているとともに、2019年6月施行の開示府令では、臨時報告書において異動に至った理由・経緯などの記載が要求されるようになったこともあり、記載内容は以前と比較すると随分変化しています。

とはいうものの、継続監査期間の長期化による新たな視点による監査、監査報酬の増加傾向による見直しなど、記載されてる内容はある意味定型的なものがほとんどという印象です。

個人的には、大手監査法人から中小監査法人に変更した際に、「現会計監査人の監査継続年数が⻑期にわたっており、従来と異なる視点や手法による監査を通じて当社の財務情報の更なる信頼性の向上を図ること、及び当社の事業規模に適した監査対応と報酬の観点から、複数の監査法人を比較検討してまいりました。」などという開示をみると、大手監査法人が必ずしも優れているとは思いませんが、「更なる信頼性の向上」を一番目にもってくるのであれば大手を選択するのが普通ではというつっこみを入れたくなります。

むしろ、大手から準大手に変更したケースで「現在の会計監査人につきましては、会計監査が適切かつ妥当に行われることを確保する体制を十分に備えておりますが、当社グループの事業規模に適した監査対応と監査費用等について他の監査法人と比較検討してまいりました。」というような記載のほうが納得感が高かったりします。

このような会計監査人の交代に関する開示において、上記の記事によると監査役会などが定めた基準に則って交代に至った旨を開示している事例が2020年には8社あったとのことです。

事例の一つとして紹介されていたのが、平和不動産(東一,不動産業)が2020年5月15日公表した適時開示の内容でした。

(前略)当社はこれまで同監査法人から適切かつ妥当な会計監査を受けてきたと判断しております。
しかし、会計監査の充実に向けた努力が重ねられるなか、監査役会は、監査法人の品質管理等について客観的に把握する観点及び現任会計監査人による継続監査年数が長期に及んでいることに鑑み、「会計監査人の選定基準」及び「会計監査人の評価および再任の判断の基準」の見直しを行うとともに、継続監査期間 10 年ごとに再評価を行う「会計監査人再評価制度」(以下「本制度」という。詳細は下表参照。)を導入いたしました。
本制度は、現任会計監査人と他の監査法人とをこれまでの当社における監査実績等を考慮することなく比較評価する機会を定期的に設けることによって、同一監査法人の再任が継続するなかでは見えてこない部分を把握し、継続的に会計監査の実効性を高めようとするものであります。本制度の導入に当たっては複数の監査法人へのヒアリング等を実施し、その内容の充実を図るように努めました。
監査役会では、本制度に基づき、現任会計監査人を含む複数の監査法人に提案を求め質疑を行い、これらを比較検討いたしました。その結果、当社の経営や事業環境の特性に即し、新たな助言や会計監査業務の効率化等への期待を含め総合的に勘案し、会計監査人として有限責任あずさ監査法人の選任を内定いたしました。

そして、以下の様な概要が表形式で記載されています。

10年未満の監査継続期間で監査継続期間が長期であることを理由に会計監査人を変更した旨を開示しているようなケースも目にしたことがありますが、10年経過したら必ず交代するというのではなく、改めてきちんと考えるというのはよい方法ではないかと感じます。

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