ワーケーション旅費の税務上の取扱い
報道等ではワーケーションについて見聞きするものの周りに実際にワーケーションで働いたことがあるという人がいないので、税務処理なども真面目に考えたことはありませんでしたが、観光庁が昨年末に公表した「『新たな旅のスタイル』ワーケーション&プレジャー企業向けパンフレット(簡易版)」で税務上の取扱いが示されているということを税務通信3650号の記事で知りました。
当該税務上の考え方については、国税庁等と調整した上で公表されたものとのことです。
ワーケーションに関する税務上の考え方はQ&A2問で示されており、このほかブレジャー関連でQ&A2問が示されています。ブレジャーについては、あまり聞き慣れない用語かもしれませんが、「Business(ビジネス)とLeisure(レジャー)を組み合わせた造語」で、「出張等の機会を活用し、出張先等で滞在を延長するなどして余暇を楽しむこと」とされています。
ワーケーションのQ&Aの一つ目は、私的旅行の合間に仕事をしたいという従業員にテレワークを認める場合に、その旅費を負担した場合に給与課税が必要かというものです。
結論としては、給与課税が必要とされています。旅行の合間に仕事をするというケースで旅費を会社が負担しても給与課税にならないというのであれば画期的ですが、上記の結論は想像通りだと思いますので、理由については割愛します。
二つ目のQ&Aは、観光地にある研修施設で研修を実施し、研修の翌日に休暇をとって宿泊地の近辺を自由に観光できるようなケースにおいて、宿泊地の往復費用を会社が負担した場合に給与課税が必要かというものです。
こちらは結論としては、往復の交通費については給与課税不要とされています。これについては、ブレジャーについての取扱いと同じで、そちらのQ&Aのほうが分かりやすいので、ブレジャーについてのQ&Aを紹介します。
ブレジャーのQ&Aの一つは「出張中に私的旅行を組んだ場合の往復旅費はどのように経費処理すべきでしょうか。」というものです。
これは、以前から実務上もケースとしては結構あるのではないかと思います。例えば、関東圏で働いている人が、北海道とか沖縄に出張し、金曜日に帰ってこれるのを、日曜に帰ってくるようにするというようなケースです。もちろん、土曜日の宿泊費や現地での移動費用は自己負担という前提ですが、このような場合の復路の旅費の取扱いはどうなるのかという点です。
この点については、「その旅行の直接の動機が業務の遂行のためであり、その旅行を機会に観光を併せて行うものである場合は、その往復の旅費(取引先の所在地等その業務を遂行する場所までのものに限る。)は、法人の業務の遂行上直接必要と認められるもの、つまり旅費として取り扱うこととなります」とされています。
なお、「『その旅行の直接の動機が業務の遂行のためであり、その旅行を機会に観光を併せて行うものである場合』に該当するかは、その旅行の目的、旅行先、旅行経路、旅行期間等、個々の事実関係に基づき総合的に判断」するものとされています。
実務上も、上記のような場合に出張費への往復旅費については、元々支払う必要があるものなので、会社負担としていることが通常だと思われます。そういった意味で、特に取扱いを見直す必要はないケースが多いのではないかと思います。
観光庁のパンフレットでは、以下の様な図によって、出張先との往復旅費については会社負担となる旨が示されています。
(出典:「『新たな旅のスタイル』ワーケーション&プレジャー企業向けパンフレット(簡易版)」P6)
場合によってはケース3のケースで広島から飛行機で東京に帰ってくるというようなこともあるかもしれませんが、ケース2においても東京大阪間の費用については旅費で計上可能とされていますので、通常要する往復費用を支給している場合には給与課税されないという理解でよさそうです。