ムゲンエステート、消費税をめぐる裁判で上告を断念
2021年5月6日に株式会社ムゲンエステートは「更正処分等の取消訴訟等に関するお知らせ」という適時開示を公表しました。
内容は4月21日の東京高裁判決により、敗訴となった部分について上告しないことを決定したというものです。
マンション販売事業者の仕入税額控除を巡る裁判では、一審でADワークスとムゲンエステート社で異なる結果となっており、二審では一審で敗訴していたムゲンエステート社の判決が注目されていましたが、結果として、二審でも基本的にムゲンエステート社の敗訴となりました。
ただし、過少申告加算税(83百万円)部分については、「税務当局は、平成17年頃には、平成9年事例の見解を変更したことが窺われるが、税務当局として、従来の見解を変更したことを納税者に周知するなど、これが定着するような必要な措置を講じているとは認められない」などとして、原告による過少申告に「正当な理由」があると認めたとのことです。
この過少申告加算税部分について、ムゲンエステート社の適時開示資料では「・・・、被控訴人である国が上告する可能性があり(なお、現時点では国の上告を確認できておりません。)、上告された場合には本件訴訟が係属することとなりますので・・・」と述べられています。
注目を集めていた事案でもあり、ここまできたら最高裁までいくのかと思っていたので、上告を断念したというのはやや意外でしたが、すでに5期も税務当局の見解に従った処理をしており、それなりにビジネスがまわっているのであれば(直近2期の業績は落ちてきていますが・・・)、これ以上、費用をかけて争っても仕方がないということかもしれません。
この裁判では、不動産購入時に全部又は一部が住宅用として賃貸されている場合に、最終的に販売することを目的とするのであれば、当該不動産の建物部分にかかる消費税が、課税売上のみに要するものなのか、いわゆる共通仕入になるのかが争点となっていましたが、この点について東京高裁では以下の様に判断したとのことです(一部抜粋)。
「ベン図的にも、「課税資産の譲渡等に要するもの」と「その他の資産の譲渡等のみに要するもの」と「課税資産の譲渡とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」との3区分があるのであるから、課税資産の譲渡等に「のみ」要するというのは、その他の資産の譲渡等には要しないものと解するのが自然であることを前提とすると、規程の趣旨からも指定の文言からも消費税法30条2項1号の「課税資産の譲渡等にのみ要する」とは、課税の累積が生じる場合である課税資産の譲渡等に要することが課税仕入れを行った日を基準として見込まれており(ないしは予定されており)かつその他の資産の譲渡等に要することが課税仕入れを行った日を基準として見込まれていないことを要するものと解釈するのが相当である。」
そして「事業者に課税資産の譲渡等の目的があり、その他の資産の譲渡等の目的がなかったとしても、課税仕入れを行った日において将来その他の資産の譲渡等が確実に見込まれ、その他の資産の譲渡等に要する課税仕入れとなることが明らかである場合には、共通課税仕入れに該当すると解釈するのが相当である。」としたとのことです。
同様の事案で一審で勝訴しているADワークスの二審判決は7月29日に下される予定とのことです。ムゲンエステート社の高裁判決では、ADワークス社の勝訴判決も考慮されているとのことですので、そうなるとADワークス社の判決も変化する可能性がかなりあるといえそうです。
7月29日の判決および仮に敗訴となった場合の会社の対応に注目です。