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ISSがバーチャルオンリー株主総会開催のための定款変更に反対推奨

数日前に”バーチャルオンリー型株主総会のための定款変更議案上程が5社“で、産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律が改正することなどを条件として、上場会社5社が6月の総会で定款変更議案を上程するということを取り上げました。

その中の1社である株式会社アイ・アールジャパンホールディングスが2021年5月28日に「当社第7期定時株主総会の第1号議案に関する議決権行使助言会社ISS社の反対推奨に対する当社の見解について」という適時開示を行いました。

議決権行使助言会社のISSが、バーチャルオンリー株主総会を開催するための定款変更議案に対して反対推奨しているという情報を入手したとして、会社の見解が述べられています。

まず、ISSは何故反対推奨なのかについては、「ISSが示している懸念点」として同開示資料には以下のとおり記載されています。

(1)バーチャルオンリーの株主総会は、株主が行う取締役の責任追及に影響を与える可能性があり、経営陣及び株主の間の有意義な交流を妨げる可能性がある。
(2)株主提案を受けた場合や委任状争奪戦になった場合には、会社と株主の間の交流が重要となるが、バーチャルオンリーの株主総会では、そのような交流が有意義に行われるかどうかは疑問である。
(3)バーチャルオンリーの株主総会に関する公的な議論は日本で始まったばかりであり、現在のところ、ベスト・プラクティスに関する株主や企業の間のコンセンサスは得られていない。産業競争力強化法改正案では、企業は、2年間は暫定的な規制緩和を利用し、定款変更をすることなく、バーチャルオンリーの株主総会を開催することが可能であるから、現時点で定款変更をする必要がなく、ベスト・プラクティスが確立した後に定款変更を行えば足りる。

要は、バーチャルオンリー株主総会はメリットばかりではないと考えられるし、当面は経過措置によりバーチャルオンリー株主総会を開催しようとすれば可能であるので、バーチャルオンリー株主総会をやるなら経過措置でやってみてから判断してもよいのではないかということだと思われます。

これに対して会社は、以下の見解を示しています。

➀遠隔地の株主など現在株主総会に出席することが困難な多くの株主に対して株主総会に出席する道を開くことにより株主総会における経営陣と株主との交流を促進する
②株主総会の会場確保を不要とすることにより、株主総会開催コストを低減するとともに、株主が出席しやすい開催期日を選択する自由度を増すことができる
という点で株主総会の活性化・効率化・円滑化に有効であるからです。

さらに、「当社が他の会社に先駆けてバーチャルオンリーの株主総会の定款変更を行うことにより、ベスト・プラクティスの確立に貢献し、株主総会対応のスペシャリストとしての当社の企業価値を高めることとなる。」とも述べられています。

➀は確かに一理あるように思いますが、株主の立場からするとバーチャル総会は味気ない気もするので、ハイブリッドでやってくれたらよいのではという意見もあるのではないかと思います。

②については、コスト面と日程選択の自由度について述べていますが、まず、同社の株主は2020年3月31日時点で3,493名でしたので、株主総会の参加者はそれほど多くないのではないかと推測され、会場のコスト等はあまり大きくないのではないかと思われます。むしろバーチャルオンリー総会を実施しようとすれば、支障なくバーチャルオンリー総会を行うために必要な通信回線等を準備しておく方がよりコストが高くなるのではないかと思います。また、都内の3月決算会社ですので、会場の確保は確かに大変かも知れませんが、同社の昨年の総会日程を確認してみると2020年6月25日で、3月決算では2番目に開催が多い日程となっており、日程選択の自由度云々はとってつけた理由のように感じます。

結局、同社がいち早く定款変更に踏み切った理由は、「当社が他の会社に先駆けてバーチャルオンリーの株主総会の定款変更を行うことにより、ベスト・プラクティスの確立に貢献し、株主総会対応のスペシャリストとしての当社の企業価値を高めることとなる。」と考えていることにつきるのではないかと思います。

個人的には、現場で役員の動きや表情などをきちんとみたいということもあると思いますので、バーチャルオンリー総会には懐疑的ですが、今後の実務動向は注視しておこうと思います。

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