キャッシュレスポイント還元事業で国に賠償命令が下されたそうです
2021年8月31日に神戸地裁は、経済産業省が消費税率の引き上げに伴って実施した「キャッシュレス・消費者還元事業」関連して、国に対し1,100万円余りの賠償を命じたそうです。
これは、「キャッシュレス・消費者還元事業」について、消費者生活協同組合(以下、「生協」)が加盟店登録を行ったところ、国が、原告の生協は、売上高、出資総額、従業員数等からみても、本件事業が対象とする中小事業者とはいえないとして登録を認めなかったため、生協が準備費用相当額の損害を被ったものとして国を訴えたものとのことです(T&A master No.903)。
これだけだと要件を満たさないのであれば当然という感じですが、当初は生協等についても加盟店と認める方針であったところ、直前になって方針を撤回したという経緯があったそうです。したがって、今回取り上げられていた生協以外でも、同様のケースはあるのではないかと推測されます。
この事業の加盟店登録要領では、生協等について、「登録申請時点において、直近3年間の課税所得の平均額が15億円を超える事業者(課税所得要件)」に該当しない限り、加盟店登録の対象となり得る旨が記載されており、生協等は「課税所得」の欄にのみ「〇」があり、「資本金等」、「従業員数」等の欄がいずれも確認不要とされていたとのことです。
このような状況をふまえ、裁判所は「本件事業の加盟店登録申請を行うにあたっては、事業者側が登録要領等を信用した上で、本件事業に参加可能か否かを判断するため、生協等は課税所得要件を満たす限り加盟店登録の対象となり得る旨が要領に記載されている以上、事業規模を理由に対象外となる可能性があるとは読み取れないとの判断を示した」とのことです。
たしかに、国が作成している要領に従って判断したものを、あとになってひっくり返されると事業者側としては如何ともしがたいので、上記のような判断になってくれないと困ります。それとともに、わかりにくい内容だと解説書などに頼りがちになりますが、元資料を確認することの重要性を改めて感じました。